中国半導体産業の現状と展望2022
掲載日 2021/12/03
2020年の中国半導体市場は「十三五」(13次5ヵ年計画)により、前年比17%増の8,848億元(15兆7,848億円)に達し、世界市場の37.54%を占めるようになった。しかし、中国の半導体自給率は低く、2020年同15.9%であり、そのうち、中国に本社を置く企業は5.9%に過ぎず、残りの10%は、TSMC、SK Hynix、Samsung、Intelなどの中国に工場を設立した海外半導体大手企業である。また、中国に対する米国の技術制限政策は、中国の半導体産業の発展を阻害する要因となっている。
1、米中貿易摩擦
2017年にトランプが米国大統領に就任して以来、中国に対し半導体に関する貿易制限を開始した。2018年4月にZTE(中興通訊)、2019年に中国スーパーコンピューターメーカーのSugon(中科曙光)を含む5つの中国企業、2020年には、Huawei(華為)関連企業と中国最大の半導体メーカーのSMIC(中芯国際)を含む合計115社の中国企業、2021年11月までに、国立スーパーコンピュータセンター深圳(National Supercomputing Centre in Shenzhen, NSCS)、半導体設計企業のGoke Microelectronics(国科微)を含む42社がエンティティリストに含まれ、アメリカの部品を購入することを禁じられた。
さらに、米国政府は2021年10月に「安全な機器に関する法律(Secure Equipment Act)」である、Huawei(華為)やZTE(中興通訊)などの機器が米国の電気通信ネットワークに侵入するのを防ぐ法案を通過させた。同年11月バイデン政権は安全上の理由で、中国における米Intel社の増産計画を取りやめさせたという。
2、ビッグファンド(国家集成電路産業投資基金)
ビッグファンドの第1段階は集積回路産業の発展を促進することを目的としており、2014年9月に1,387億元(2兆4,744億円)の規模で設立され、2018年5月に投資が完了した。投資分野は基本的にIC製造産業を中心に、67%と半分以上を占め、その他IC設計産業とパッケージング17%、テスト産業10%、半導体製造装置と材料が6%を占めている。2021年の第2四半期まで、ビッグファンドの第1段階は、上場企業17社の取引可能な株主トップ10に投入された。LED用エピタキシャルウエハのSanan Optoelectronics(三安光電)、OSATのJCET(長電科技)、パワー半導体IDMのCRM(華潤微)、半導体設計企業のGoke Microelectronics(国科微)、製造装置メーカーのNAURA(北方華創)、半導体材料メーカーのAnji Technology(安集科技)などがある。ビッグファンドの第1段階の投資効果は大きく、2019年から2024年までの期間に投資回収をしている。同時に、2019年10月にビッグファンド第2段階が2,041億5,000万元(約3兆6,420億円)で設立され、半導体装置および材料の分野に焦点を当てる。現在公表されている投資計画では、スマホ用SoC大手UNISOC(紫光展鋭)、SMIC(中芯国際)、テスターとハンドラーメーカーのCCTech(長川科技)、CRM(華潤微)、電子特殊ガス製造企業のNATA OPTO-ELECT(南大光電)、エッチング装置メーカーのAMEC(中微公司)などで、総投資額は325億元(5,798億円)超の規模になる。
3、「十三五」計画と中国半導体産業の発展現状
「十三五」は中国国民経済と社会発展の第13次5カ年計画であり、期間は2015年から2020年に行われた。これにより、中国の半導体プロセス技術は大きく進化し、28nmの300mm生産ラインの量産、14nmは生産開始が可能となった。200mm生産プロセスは、主に0.18um-90nmが中心である。
2015年の中国半導体産業市場は3,610億元(6兆4,402億円)であり、設計、製造、パッケージングとテスト産業の売上高はそれぞれ1,325億元(2兆3,638億円)、901億元(1兆6,074億円)、1,384億元(2兆4,691億円)であった。
2020年には、中国の半導体産業市場規模は8,848億元(15兆7,848億円)に達し、設計、製造、パッケージングとテスト産業の売上高はそれぞれ3,778億元(6兆7,400億円)、2,560億元(4兆5,670億円)、2,510億元(4兆4,778億円)になっている。全体のCAGRは20%に近い。
2020年の中国の半導体生産規模は2,612億6,000万個に達し、2019年に比べると594.4億個増加の前年比29.45%増となり、2021年上半期は1,712億個となった。中国半導体産業は、主に長江デルタ、珠江デルタ、北京-天津-河北、および中西部の省市に集中しており、産業の集中度は比較的高い。江蘇省、上海市、浙江省、その三つの地域の2020年半導体産業総売上高は、2020年の中国半導体産業総売上高の半分以上を占める。
4、「十四五」計画と中国半導体産業の展望
2021年3月「中華人民共和国国民経済・社会発展の第14次五カ年計画及び2035年までの長期目標綱要」が発表された。それによって、半導体回路分野では、設計ツール、主要装置、高純度ターゲット材料とその他の主要材料の研究開発;先端半導体技術、IGBT、MEMSとその他の特殊プロセスの発展;先端メモリ技術のアップグレード、SiC、Ga2O3半導体の発展を目指している。
その後、上海が「上海市の戦略的新興産業と主要産業の発展のための「十四五」計画」を発表し半導体産業CAGR 20%、設計、装置、材料の分野でも上場企業を多数育成していく。
「深圳市の国家経済・社会開発のための「十四五」計画及び2035年までの長期目標綱要」では、設計技術に焦点を当て、IGBTやMEMSなどの特殊プロセス、SiCなどの化合物半導体を開発する。また、SMIC(中芯国際)の300mm生産ラインの建設を加速し、パッケージングとテスト、装置と材料産業を強化する。
2021年の第1四半期の中国半導体市場は、1,739億元(31,024億円)となった。2021年前半、1,712億個の半導体チップを生産した。GNCでは、2021年中国半導体産業市場は1兆241億元(18兆2,699億円)、CAGR12.89%(2021-2025年) の2025年には1兆6,631億元(29兆6,697億円)に達すると予測している。
出典:GNC
※1元=17.84円
関連特集
関連カテゴリー
「中国半導体産業の現状と展望2022」に関連する特集が存在しません。
「中国半導体産業の現状と展望2022」に関連するカテゴリーが存在しません。