2024年の半導体市場を展望する

2023年後半から回復に転じる

 2022年は世界的なインフレの進行、利上げ、紛争による地政学的リスクの高まり、サプライチェーンの不安定化による産業の停滞などが、企業の設備投資、個人消費にマイナスの影響を与えた。これにより半導体市況は同年後半から悪化した。世界半導体出荷統計(WSTS)では同年の世界半導体市場は前年比2.2%増の5,740億米ドルにとどまった。
 2023年も前述の世界経済の影響は続き、半導体各分野で在庫調整が進められたこともあり、年前半の半導体市場はダウンが続いた。しかし、年後半にかけて在庫調整も終わり、一方では生成AIサーバの利用が急拡大し、そこで使用されるプロセサやDRAM需要が急ピッチで回復している。さらに車載半導体、パワー半導体は2022年以降も堅実に推移していた。しかし、スマートフォン、PC、生成AI以外のデータセンタ向けサーバなどの分野については回復が遅れている。
 このような状況から、WSTSでは2023年の半導体市場を前年比9.4%減の5,201億米ドルと見込んでいた(2023年秋季予測)。
  他の調査会社の発表も、Omdiaは同9.7%減、Gartnerが同10.9%減と10%前後のマイナスという見方では一致している。


2024年半導体市場:生成AIサーバが重要をけん引

 2024年に関しては、WSTSが前年比13.1%増の5,883億米ドル、Omdiaは同11.7%増の6,008億米ドル、Gartnerが同16.8%増の6,240億米ドルと、ばらつきはあるものの前年比二桁成長が予想されている。Gartnerは2023年を二桁減と見込んでいることから、相対的に2024年の成長率が高くなっている。


 2024年の半導体市場は前年後半から引き続き、生成AIに対応するAIサーバ関連がけん引する。サーバ用AIプロセサ、大容量のデータを処理するために必要となるDRAMの需要拡大が期待できる。
 AIプロセサでは現在NvidiaのGPUが独占状態にあるが、2024年以降はAMDIntelといったCPU企業、さらにはMicrosoft、Amazon、Google、METAといった大規模なデータセンタを運用する企業が使用するサーバ向けに自社でのプロセサ開発を計画している。
 Intel以外の企業は半導体を製造するための設備、技術を持っていないため、ファウンドリを利用するが、最先端プロセサを製造できるのは世界最大のファンドリ企業である台湾TSMCに限られる。Intelでも製造面ではTSMCとの協業を検討している。今後は顧客によるTSMCの生産能力の取り合いが生じることが予想される。


メモリ需要は急成長

 AI処理では大量のデータを高速で処理するため、大量のHBM(High Band Width:広帯域メモリ)が必要となる。このため2023年後半からDRAMの需要が急速に拡大、価格も上昇している。 NAND型フラッシュメモリについても2023年央には底を打ち、後半からは回復に向かっているものとみられる。メモリ市場は、WSTSによると前年比44.8%増という急成長が見込まれている。
 自動車産業では、2023年後半からは部品供給が安定したきたことにりより自動車、自動車部品の生産も回復、さらに半導体使用率が大きいEV/PHVも拡大している。このような状況から車載半導体市場は2023年には前年比10%超の成長が見込まれる。2024年についても引き続き10%超の成長が予想される。
 また、環境面などからシステム全般に省エネ化が求められていることから、パワー半導体も2023年に続いて高成長が期待できる。


その他分野向け市場も堅調に推移

 AIサーバ向け、車載半導体、パワーデバイス以外のスマートフォン、PC、非AIサーバなどの各分野でも、それらの分野には及ばないもの2024年には前年からの成長が期待できる。
 スマートフォン生産については2023年4Qからは前年を上回っているものとみられる。スマートフォン向け半導体についても、在庫調整が進んでいることもあり回復が進んでいる。2024年についても成長が期待できる。さらに2024年以降AI機能を搭載したモデルの販売が本格化するが、AIモデルでは搭載メモリ量が大幅に拡大していくと見込まれ、スマートフォン向け半導体需要を押し上げることが期待される。
 PC関連ではノートPCを中心に需要拡大が見込める。AI関連以外のデータセンタ向けサーバ、企業向けサーバについても、DX化の加速を背景に出荷が改善が見込まれる。関連半導体では搭載プロセサの高性能化、メモリ容量の拡大により市場規模の拡大が予想される。

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