化合物半導体(材料)

1.広がる応用分野

 化合物半導体はSi半導体では実現できない、高速、高周波対応、光デバイスなどの分野で使用されている。さらに、ここ数年ではSiC、GaNを利用したパワーデバイスの開発が進んでいる。
 化合物半導体は結晶欠陥が多く割れやすいので、ウェーハの大型化が難しい。また、材料がSiよりもに比べて高価で、コスト面からも大量に消費される分野に向いていない。しかし、Siよりも電子の移動速度がはるかに速いため高速信号処理に優れ、低電圧、光反応、マイクロ波(高周波)に優れた特性を持つため、現在は幅広く使用されている。
 具体的な応用分野としては、高周波対応、高速対応、高耐圧性を活かしたパワーデバイスなどで使用するトランジスタ、ダイオードとしての利用、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、各種受光素子といったオプトデバイスがある。
代表的な化合物半導体としては、II-VI族のZnSe、Ⅲ-Ⅴ族のGaAs、GaN、InP、InGaAlP、InGaN、IV-IV族のSiC、SiGeなどである。
 従来は、高周波、高速対応分野、オプトデバイス分野でのGaAs、InP、GaPなどが需要の中心であった。しかし、2010年代後半から、パワーデバイス向けにSiC、GaNなどの需要が高まっている。

2.化合物半導体材料の需要動向

 図に新金属協会の化合物半導体部会が発表している化合物半導体の出荷額の推移を示した。数字は国内化合物半導体材料企業(新金属協会会員+統計協力企業)を対象とした統計で、GaAs、GaP、InPなどの材料販売(デバイスとして出荷したものは含まない)が対象となっている。化合物半導体材料の全体をとらえてはいないが、市場の動きは把握できる。 2019年度(2019年4月~2020年3月)の化合物半導体材料の出荷額は前年度比8.5%減の240億円となった。GaAsが同14.3%減の142億1,200万円、GaPが同31.3%減の15億2,100万円、InPが6.4%増の64億8,000万円、その他が同33.8%増の17億8,700万円となった。  GaAsの主な用途市場はスマートフォン等に使用される高周波デバイス、また各種の表示機器やセンサ等に使用される可視・赤外 LED、および光ディスク・加工機・センサ等に使用されるレーザダイオード(LD)等があるが、2019年度は国内外の多くの用途で、需要が減少したことにより出荷額が低下した。 GaPは主たる用途である可視発光LED全体の需要が車載、家電等の分野で落ち込みが続いたことにより減少した。さらに GaP系から高輝度AlInGaP系やGaN系LED への置き換えが徐々に進行していることも売り上げ減の要因となった。 InPは主要用途である光通信用の受発光素子の所要が堅調に推移した結果、国内外ともに売上を伸ばした。 2019年度後半から各製品分野で売上が出荷額が回復していることから、2020年度は前年度比で2桁近い成長となることが期待できる。

 

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