AI応用設計技術とEDAツール
掲載日 2021/09/03
現在、AI(Artificial Intelligence)が、さまざまな分野で活用が進み、あらゆる業界を変革している。これを支えるため様々な分野でAIチップの開発が加速しているなか、AIチップの開発数は急速に拡大していくことが予想される。チップ自体も高い機能を集約した複雑なものとなっていく一方、技術革新のテンポが早いことから、チップの設計開発を短期間で行うことが必要となる。その結果、より複雑な設計を、短期間で行なわなければならない。
AIチップがシステムの中核となることから、システムの差別化、高度化を実現するためには、半導体企業に加えて、システム企業側もチップの設計、開発を行うことが重要であり、すでにAmazon、Google、Tesla Motorsといった大手企業の自社によるAIチップ開発が激化している。
複雑な半導体設計を、短期間に、より多くに人によって行えるようにするために、EDAツールの高性能化、論理IPコアの充実などがEDAツールベンダ、IP開発企業などによって進めれている。
日本のAIチップ開発支援
また、AIチップは、様々な国や地域で開発支援が行われており、日本でも2020年以降活発になっている。
日本でも中小・ベンチャー企業を含む多くの企業がAIチップの開発に取り組んでいる。これを支援し、開発を加速するため、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、イノベーション推進事業の一つとして、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)、国立大学法人東京大学と共同で、東京大学浅野キャンパス(東京都文京区)内の武田先端知ビルに「AIチップ設計拠点」を整備した(事業期間は2018年度~2022年度)。同拠点にはAIチップ設計に必要なEDAツールやハードウェアエミュレータ、標準IPコアなどからなるAIチップの設計環境を整えるとともに、これらを活用する設計フローなど、AIチップ設計のための共通基盤技術の開発、知見・ノウハウの蓄積や人材育成などを進めている。
2021年6月には同プロジェクトに採用するEDAツールや標準IPコアの選定、導入などAIチップの設計環境の試用準備を終え公開、試験運用を開始した。今後、利用者からのフィードバックなどを活用して、さらに使いやすいAIチップ設計拠点として整備する。
NEDOとは別に東京大学では2019年に東京大学大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)を、2020年8月には産学連携の半導体技術開発拠点「先端システム技術研究組合(RaaS)」を発足させている。d.labは半導体設計技術開発を行うアカデミズム側の拠点。RaaSはd.labの研究成果を実用化し、参加企業が事業として展開することを支援する。エネルギー効率を10倍、開発効率を10倍に高めた設計技術の開発を目標にしている。組合員は東京大学のほか、凸版印刷、パナソニック、日立製作所、ミライズテクノロジーズ、SCREENホールディングス、ダイキン、富士フイルム、パナソニック スマートファクトリーソリューションズがある。
AIが変革する設計技術
AIチップのような複雑、大規模の半導体を短い期間で設計するためには、設計にAIを応用することが必要となっている。このため、大手のEDAツールベンダがAI機能の取り込みを行っている。EDAツールは2020年には91億2,500万米ドルに拡大した。2021年には同15%増の105億米ドルとなった。AI技術の導入により、2021年以降年率10%以上の成長が期待できる。
EDAベンダのなかでいち早くAI技術を導入したツールを開発したのが米Synopsys社で2018年には、スタティックタイミング解析ツール「PrimeTime」を発表した。ECO(Engineering Change of Order)機能に機械学習技術を実装することで、解析速度を大幅に向上させている。同機能は韓国Samsung Electronics社、台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)社などで最先端のデバイス設計に利用されている。
さらに2020年3月には半導体設計プロセスに自律AIを応用したDSO.ai(Design Space Optimization AI)技術を発表している。DSO.aiは、半導体設計上の問題解決に向けた膨大な選択肢の中から最適化候補を自律的に探索するAIベースの論理的推論エンジンで、必要となる意思決定を自動的に最小化することにより、半導体設計プロセスを革命的に変化させる技術。すでにSamsungで導入、応用が進められている。
米Cadence Design Systems社でも機械学習技術をEDAに適用し、設計フローにおける様々な段階で高い予測性を実現している。これにより手作業が介入する必要性の削減することで、より効率のいい設計を可能にする。
同社では機械学習に関する知識と経験を活かしてCadence Cerebrus Intelligent Chip Explorerというソリューションを開発している。Cerebrusは、LSIのブロック設計を行うエンジニアが目標値を指定するだけで、完全に自動化された方法で、これらのパワー、パフォーマンス、エリア(PPA)の目標を満たすように、同社のデジタルフルフローを最適化する。さらに複数のブロックのフローを同時に最適化することが可能も可能になる。
Synopsy、Cadenceと並ぶ世界的なEDAツールベンダ米Siemens EDA社(旧MentorGraphics、独Siemens社子会社)のAI技術の導入を進めている。高位合成ツールである「Catapult」に機械学習機能を取り込むことで、処理性能を高めている。
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