第六回 半導体初心者の素朴な疑問 〜半導体製造は環境に配慮されているのか〜

掲載日 2025/10/31

近年、環境への影響や持続可能な社会の実現に向けた議論が様々な場面で行われている。

その中で半導体の製造現場は、膨大なエネルギー消費、温室効果ガス(GHG)の排出、有害化学物質の使用、水資源の大量消費など、様々な環境負荷が伴い、環境負荷の低減は今後の業界の課題である。

本特集では、半導体製造が「環境にどれほどの負荷を与えているのか」、そして「業界はどのような対策を講じているのか」を解説する。

 

1.   半導体製造の環境負荷

まず、半導体製造プロセスには驚くほど多くの資源が必要である。以下に主要な資源の使用量を挙げた。

 

l  水資源:シリコンウエーハ1枚を半導体製品にするのには5千リットルの超純水が必要と言われている。[1]これは各工程の洗浄において薬品やガス、スラリーなどを取り除くためである。業界全体で年間1.2兆リットルの水を消費しており、水不足地域への工場立地が問題視されている。

 

l  電力消費:一般的な工場と比べて非常に高く、特に前工程では多くのエネルギーを使用する。大規模なファブでは1時間あたり約100MWhを消費するというデータもある。これは都市一つ分の電力に匹敵する。[2]また、EUV(極端紫外線)リソグラフィにおいては従来のArf(フッ化アルゴン)エキシマレーザーでのリソグラフィと比較して約10倍の電力を消費するとも言われている。[3]このように、プロセスが高度化することで使用する装置が増加したり、より電力消費量が増加することもある。

 

l  化学物質:エッチングプロセスや化学的気相成長(CVD)装置のクリーニングにはフッ素ガスが使われるが、CO2(二酸化炭素)と比べても非常に高い地球温暖化係数を持っている。表1に示すようにCO2と比べてNF3は16,100倍もの地球温暖化係数(GWP)を持っている。

 

物質

GWP(AR5)

半導体プロセス

CO2

1

-

CHF3(トリフルオメン)

12,400

エッチングガス、クリーニングガス等

NF3(三フッ化窒素)

16,100

プラズマCVD装置のクリーニングガス等

CF4(四フッ化炭素)

6,630

ドライエッチング、CVD装置のクリーニング用等

C4F6(ヘキフルオロ13ブタジエン)

1以下

絶縁膜エッチング

C4F8(オクフルオロシクロブタン)

9,540

絶縁膜エッチングのエッチングガス

表1. 半導体プロセスに使用される物質の地球温暖化係数(GWP)[4][5]

 

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