ヒータ：ホットプレート

掲載日 2021/07/16

高精度化が要求されるウェーハ加熱用ホットプレート

　半導体製造プロセスは厳密な温度制御が必要とされることから多様なヒータが使用されている。熱処置装置で使用される反応炉を加熱するための大型ヒータ、エッチングやCVD装置など枚葉式装置のステージに組み込まれているプレートヒータやコータ/デベロッパや洗浄装置などで使用される乾燥用ヒータ、薬液の加熱用ヒータ、保温用ヒータなどサイズ、形状など様々である。本稿ではこのうちのエッチング、CVDといった真空装置のウェーハ保持ステージの加熱やコータ／デベロッパのベークや洗浄後の乾燥などに使用されるホットプレートを取り上げる。
　ホットプレートは、セラミックなどの素材に金属などの発熱体を組み込んだもの。発熱体に関してはニクロム線、エッチング箔、シーズヒータタイプなどが使用されている。これらをプレート素材に挟み込む、またはプレート形成時に埋め込む、などの方法によりホットプレートを製造している。
　CVD装置では、ヒータプレートは、処理時には400℃～700℃の装置内部の雰囲気に置かれるさらに処理後には装置外部の室温の雰囲気にさらされるため、耐熱性、耐熱衝撃性が求められる。また、成膜用ガス、エッチング用ガス等に対して耐食性があることが要求される。さらにプロセス品質を保つため、プレート内の温度均一性に優れた素材、膨張など熱変形が小さくなければならない。
　このような要求に応えるため、プレートの素材としては、セラミックのほか、石英、SiC、耐食処理されたアルミなどが採用されている。エッチング、CVDなどのプロセスでは、耐熱性、腐食性の高いガスに対する耐性（耐食性）に優れているセラミック、特に窒化アルミ（アルミナ）が広く使用されるようになっている。また、これらセラミックとアルミなどの複合構造の製品が使用されるケースもある。
　さらに、ヒータプレートには、ウェーハの保持、加熱だけでなく、静電チャック機能を付加したものが多くなっている。
　一方、洗浄装置、コータ／デベロッパなどのヒータプレートは加熱温度も低く、プラズマなどのケミカルによる影響も少ない。アルミなどのプレートが採用されている。

市場動向と参入メーカ:セラミック企業がリード

　ヒータプレートは、加工チャンバごとに導入されるため、その成長ペースはエッチング、CVD装置、洗浄装置、コータ／デベロッパなどの台数需要に連動している。このため、2019年を底に、2020年に20％以上の成長を遂げ、75.7億円に拡大した。半導体製造装置は、2020年半ばから成長を加速させており、2021年には一層の成長が見込まれている。このため、ホットプレートについても2021年には前年比26％増の95.38億円にまで拡大すると予想した。

　参入企業ではTOTO、京セラ、日本ガイシ（NGK）、日本特殊陶業（半導体事業はNTKセラテック）などのセラミック企業が世界的に大きなシェアを占めている。このほか、日本フェンオール、日本電熱、坂口電熱、新熱工業、テルモセラ・ジャパン（Thermocera Japan)などのヒータメーカが製品を投入している。各社とも標準製品はあるが、ユーザーの要求に合わせたカスタム使用が中心となっている。
TOTOは静電チャックと一体化したホットプレートが主力。需要増に対応するため、子会社であるTOTOファインセラミックス（福岡県北九州市）・中津工場敷地内にセラミックス製品の生産工場棟を新設、2020年から稼働させている。
　京セラはアルミナヒータ単体、静電チャックとの組み合わせなど、ユーザの要求に合わせた製品の提供を行っている。
　NGKはアルミナベースで、発熱体を直接形成時に埋め込む一体焼結構造を採用している。発熱体だけでなく、静電チャック用電極、高周波電極を同時に埋め込むことも可能になっている。
　日本特殊陶業は半導体製造装置などで使用するセラミックス製品はNTKセラテックで行っている。
　日本フェンオールはヒータや熱制御システムのメーカ。ホットプレートはアルミを中心に、SiC、SUSなどの材質での製造に対応している。　
　日本電熱は、アルミ材、Cu材などを利用したヒータをユーザーの要求に合わせて、カスタム製造している。
　新熱工業は産業用ヒーターメーカーで、プレート材質、加工方法、温度、容量などにあわせて同社オリジナルヒーターを組み込んだホットプレートの提供を可能にしている。テルモセラ・ジャパン（Thermocera Japan)は大学・企業研究室での各種薄膜実験に適した、廉価な基板加熱ヒーターが中心。量産装置への導入例はない。
　半導体製造装置の高度化に伴って、より装置メーカと直結した開発が行われると予想される。