プローブカード
掲載日 2021/08/27
MEMS型が主流に
LSIのウェーハテスト工程では、LSI側の電極パッドにプローブピンと呼ばれる微細なピンを接触させて回路に信号を流して、ウェーハ上に形成されたチップのテストを行う。この工程でテスタのヘッド部分に取り付けて、ウェーハとのコンタクトに使用されるのが、多数のプローブピンを実装したプローブカードである。
プローブカードとしては、カンチレバー型が広く使用されてきた。カンチレバー型は、タングステン(W)のピンをプローブ基板に片持ち梁状(カンチレバー)に固定し、スプリング機構を構成する。プローブピンはチップ周辺部から伸びており、パッドにコンタクトされる。
同時測定個数(チップ数)の拡大、パッドの微細化、狭ピッチ化、さらにパッド配置の多様化が進むにつれ、カンチレバー型では対応が難しくなってきた。この課題に対応するため、パッドの真上から垂直にピンをあてる垂直型が開発された。ピンを自由に配置することができるため、多数個同時測定にも適している。2018年頃まで垂直型プローブカードが主流となっていた。カンチレバー型も実績、コスト面から継続的に使用されている。
しかし、2016~2017年からMEMS型が急速に需要を拡大、2018年以降は垂直型を上回り、プローブカードの中心となっている。MEMS型は、カンチレバー型、垂直型のようにプローブピンを基板に実装するのではなく、MEMS技術によりプローブカード基板上に直接、微細なプローブピンを作り込むというもの。
より細いピンを高密度で実装できることから、狭ピッチに対応できる。パッドとピンが接する面積を抑えることで高周波対応にも優れており、MEMS技術による高い位置精度が実現できる。基板も多層配線化し、高速なデータ転送を可能にしている。300mmウェーハ全面を一回のコンタクトで測定することのできるカードも製品化されている。
プローブカード市場、2020年に急成長
プローブカード市場は、2019年には他の装置、材料と同様に前年割れとなったものの微減に抑えられた。これは年後半からメモリ向けの需要が拡大したため。2020年は後半からメモリ向けの成長は鈍ったが、ファンドリ、ロジック向けが売り上げを伸ばした。
ファンドリ、ロジックでは測定対象となるLSIの数が拡大するとともに、5G用チップの増加、2.5D実装によるパッケージあたりの搭載チップの増加などによるLSIの種類が増加しているためプローブカードについても多くの種類を準備することが必要になってきた。このように量の拡大、種類の広がりにより、2020年以降ロジック、ファンドリ分野向けの需要が急成長、プローブカード市場は2020年には前年比25.5%増の2,115億2,300万円に達した。2020年でロジック、ファンドリ向けが市場の60%以上を占めていると推定される。プローブカードの種類では、高性能なMEMSタイプが実績を伸ばし、プローブカード全体の65%程度に達しているものとみられる。
半導体市場は2021年も引き続き拡大が見込まれており、プローブカード市場も前年比24.0%の2,623億2,000万円となると予測している。
Formfactorがトップ、2位にはTechnoprobeが浮上
プロ―カード市場には多くの企業が参入している。2020年のシェアを図2にまとめている。その中でトップシェアを占めているのが米FormFactor社。2020年では約30%のシェアを占めている。アプリケーション別では、2020年には非メモリ分野向けの売上高が76%に達している。また、売り上げの約25%が米Intel社向けとなっている。
市場シェア第2位がイタリアのTechnoProbe 社で約14%のシェアを占めている。いち早くMEMSタイプのプローブカードの強化に取り組み、2017年にはシンガポールに同カードの量産工場を建設した。その生産能力を活かして、2018年には2位に浮上した。
3位、4位は日本マイクロニクス(MJC)、日本電子材料(JEM)の日本メーカ。両社は2000年代までは世界のトップを争っていたが、米FormFactor社が先端デバイス用プローブカードの開発や企業買収による事業規模の拡大によってシェアを拡大していった。
MJCはメモリ向けの先端カード(垂直型,MEMS型)が売上の中心で、2020年には売上高の87%を占めている。一方カンチレバー型についても2020年に前年比38%増と大幅に拡大させている。
JEMもメモリ向けが中心となっている。パッケージ種類ではMEMS型を2019年に売り上げの50%にまで高め、2020年は60%超にまで引き上げている。
日本企業としてはSVC TCLが第6位、4.5%のシェアを占めている。同社は日本電産の子会社である日本電産リードの子会社。2013年にシンガポールのSV Probe社と日本の有力プローブカードメーカであった東京カソード研究所(TCL)が統合した企業。Nidec SVC TCL グループ本社はシンガポールに置かれている。
第5位は台湾企業のMPI。カンチレバー型に加えて、バックライングビームを利用して均一なプローブを実現する垂直型とMEMS型の中間にあたる製品を投入している。
台湾企業では、台湾の大手キャリア中華電信の基板事業を母体とするCHPTも事績を伸ばしている。2020年には前年比113%増と2倍以上の拡大を遂げ、37億9,000万円の売り上げを達成した。2021年もさらに倍増し、78億7,300万円にまで拡大することが期待される。同社売上高の50%以上が台湾Taiwan Semiconductor Manufacturering(TSMC)社向けと見込まれる。なかでもアプリケーションプロセサ(AP)向けで実績を伸ばしている。
第7位がKorea Insturments社のシェアは3.5%。売上の50%が韓国Samsung Electronics社向けである。同じ韓国メーカのMicrofriend社もSamusung向けが中心である。
同じ韓国メーカでMEMSタイプを主力とするTSE社もSamsung、SK Hynix向けで実績を残している。
関連特集
関連カテゴリー
「プローブカード」に関連する特集が存在しません。
「プローブカード」に関連するカテゴリーが存在しません。