半導体製造における真空工学(後編)
掲載日 2025/08/01
後編では、真空プロセス製造装置で使われている真空コンポーネントについて解説する。
半導体製造の真空プロセス製造装置において汎用的に使われる真空コンポーネントで主なものは、真空ポンプと真空圧力計である。
1.真空ポンプ
中編で述べた真空を使うほとんどの半導体製造装置の真空排気系は、真空チャンバーチャンバー側の上段ポンプと大気側の下段ポンプを直列に接続して構成されている。
これは、真空プロセスで必要な圧力10-7~1Pa程度を吸入圧力とし、大気圧を排出圧力として、十分な排気速度を持つ真空ポンプが存在しない為である。
表1.に半導体製造装置で使用される真空ポンプの分類を示す。この表で、到達圧力はポンプの吸入口を仕切って、気体の流入が無い状態での吸入側圧力で、ポンプ性能を表す重要指標である。
また吸気メカニズムには、容積移送式、運動量移送式、溜込み式がある。
体積移送式は、吸気した気体の体積をそのままの体積で、あるいは小さい体積に圧縮して、吐出側(排気側)へ移送する方式である。
運動量移送式は、気体分子に吐出(排気)方向に向かう運動量を与えることで、気体を低圧側から高圧側へ移送させる方式で、油拡散ポンプとターボ分子ポンプがこれに相当する。
溜込み式は、ポンプ内の固体表面に一旦吸着した気体分子を再脱離しないように固定表面に止めてしまう方式で、真空チェンバー内の気体を排気する方式である。気体を吸着している個体表面は、気体分子が溜るにつれ吸着能力が下がる為、一定量を吸着したら、溜った気体分子を脱離させる「再生(Regeneration)」が必要で、他の方式の真空ポンプと異なり、溜込み式ポンプは連続運転が出来ないことに注意が必要である。
ウェット(湿式)ポンプとは、排気する気体の流動経路内(接ガス部)に液体(真空用油、水)が存在するポンプで、原理的に これらのポンプの到達真空圧は、この液体の蒸気圧以下には出来ない。
ドライ(乾式)ポンプは、気体の流動経路内(接ガス部)に液体が存在せず、真空チャンバーへ油蒸気等の逆拡散が無く、「クリーンな真空」が得られる。
表1. 半導体製造装置(真空装置)で使われる真空ポンプの分類
続きをご覧いただくにはログインしていただく必要があります。
関連特集
関連カテゴリー
「半導体製造における真空工学(後編)」に関連するカテゴリーが存在しません。