データセンタ向け半導体冷却システムの進展

掲載日 2026/06/19


1.
      AI半導体において発熱対策が重要に

AIの急速な普及と大規模言語モデル(LLM)の高度化、さらにはエクサスケール・スーパーコンピューティングの進展に伴い、半導体の高性能化はデジタル社会を支える重要な基盤となっている。一方で、その進化を支えるうえで、発熱への対応は半導体業界における重要な技術課題の一つとなっている。

半導体の高集積化やナノメートル世代の微細化プロセスの進展により、単位面積当たりの熱流束(ヒートフラックス)は大幅に増加している。このため、発生した熱をいかに効率的に外部へ放散するかが、システムの性能や動作の安定性、さらにはデバイスの信頼性や寿命を左右する重要な要素となっている。動作温度が許容範囲を超えると、過熱を防ぐためのサーマルスロットリングが作動し、処理性能が低下する場合もある。

本稿では、半導体の熱対策技術の変遷を振り返るとともに、空冷に加えて液冷や液浸冷却などの最新技術の動向や課題、さらには主要企業や研究機関による取り組みについて概説する。

 





2.      冷却技術の歴史

初期のトランジスタや集積回路(IC)は発熱量が小さく、熱設計が大きな課題となることは少なかった。2000年代初頭においても、中央処理演算装置(CPU)の熱流束(単位面積当たりの発熱量)は10~15W/㎠程度にとどまっており、アルミニウムや銅製のヒートシンクと冷却ファンを組み合わせた空冷方式で十分に対応可能であった。

しかし、微細化技術の進展とトランジスタ密度の増加に伴い、発熱密度は次第に高まり、2010年頃には100W/㎠級に達するデバイスも現れ始めた。これに伴い、チップ内部で局所的に温度が上昇する「ホットスポット」が重要な課題となったこうした中、空冷方式の性能向上を目的として、相変化を利用して熱を高速に輸送するヒートパイプやベイパーチャンバが広く採用されるようになった。これらの技術は、受熱部から放熱フィンへの熱輸送効率を大幅に向上させ、PCやサーバーの冷却性能向上に寄与した(図 1、図 2)。一方で、最終的に熱を空気へ放散する構成であることに変わりはなく、空気の熱伝達特性や熱容量には制約があることから、さらなる冷却能力向上には限界があった。





図 1 ヒートパイプの仕組み[1]






 

図 2 ベイパーチャンバの仕組み[2]






そこで注目されたのが、空気よりも高い熱容量を有する液体を利用する液冷技術である。液冷は、スーパーコンピュータや高性能コンピュータ(HPC)向けシステムを中心に導入が進み、水や専用冷却液を用いることで空冷方式よりも高い冷却性能を実現した。

2010年代後半以降、3D積層技術やチップレット技術の普及により、熱問題はさらに複雑化した。発熱源が立体的に配置されることで、内部で発生した熱を効率的に外部へ放散することが難しくなったためである。これに対し、各社はチップのダイに冷却機構を直接接触させるDirect-to-Chip冷却などの直接液冷技術を開発し、高発熱デバイスへの対応を進めてきた(図 3)。



図 3  Direct-to-Chip冷却技術[3]

 



現在では、AI向け画像処理演算装置(GPU)を中心に消費電力が1,000W級に達する製品も登場しており、発熱対策は依然として重要な技術課題となっている。従来の空冷と液冷を組み合わせたハイブリッド構成に加え、サーバー全体を絶縁性の液体中に浸す液浸冷却などの新たな冷却技術の導入も進んでおり、より高効率な熱管理技術の開発が続けられている。



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