サーボモーター

サーボモータはモータ幅の回転角度及び回転速度を検出器(エンコーダ)で検出し、モータドライバへフィードバックするという機構のモータである。半導体製造装置関連の前工程では主に搬送ロボットやステージ、コータ&デベロッパ、半導体洗浄装置CMP装置に使用されている。後工程では、pick & place装置やハンドラ、ワイヤボンディング装置などに利用され、高速での動作/停止及び綿密な位置制御が求められるほとんどの半導体製造装置に使用されている。
日本電気工業会が発表した、日本における2018年のサーボモータの出荷金額実績を見ていくと、半導体/液晶製造装置向けが全体の16.4%を占め、1位の産業用ロボットに次いで2番目となる。スマートフォンやパソコンといったデバイスの組み立て分野においても10.4%のシェアを持つ。日本のサーボモータの出荷金額は2000年〜2018年の変化を見ていくと、概ね順調に右肩上がりで推移しており、CAGRは1.9%となった。
このようなACサーボモータ市場には、国内で世界トップシェアの安川電機、三菱電機、パナソニックの他に、オムロン、明電舎、山洋電機、日立産機システムがエントリーしている。
海外では、台Delta、独シーメンス、中Shenzhen Inovance Technologyといった企業がある。

日本企業が強さを見せるサーボモーター業界

ACサーボモーター世界シェア1位の安川電機は、2020年度のサーボシステムの売上は中国市場を始めとするデバイスの組み立てやチップ製造といったスマートフォン周辺分野が好調で、サーボシステム売上高は1073.6億円であった。2021年度は半導体製造装置全般が好調に推移する見通しから、そこから更に10%以上もの増加を見込んでいる。

同社はACサーボモーター「Σ-7シリーズ」ダイレクトドライブモータを搭載したロボット「MD124 D」を2020年に発表した。自社生産のモーターを活かして、従来機種から振動加速度を1/10、位置繰り返し精度を2.5倍、絶対位置精度を2倍にまで高めた。

このロボット「MD124D」は日刊工業新聞社主催「第63回 十大新製品賞(本賞)」 を受賞しており、安川電機のサーボモーターの優位性を示した。

三菱電機は、国内で3番目のサーボモーター売上を持つと推定される。同社では、従来機から最大回転速度を5割増加させた工場自動化(FA)関連設備向けサーボモーターを開発、販売を開始した。新モーターは設計変更により回転を高速化した。具体的にはモーター内部の磁極数を10極から6極に減らしたほか、絶縁耐圧の向上や銅線の巻線領域の拡大に取り組んだ。モーターは回転数が増加すると駆動周波数が上昇するため、鉄心と銅心部分で損失が生まれるが、新モーターではこのような損失を低減することに成功している。

また、同社ではパワー半導体も手掛けることから、高性能パワー半導体を生かした、高出力、低消費電力のサーボモーターシステムを展開していくと見られる。

世界最大のサーボモーター市場 中国が生んだShenzhen Inovance Technology

Shenzhen Inovance Technologyは、中国の自動制御装置メーカーであり、サーボモーターを製造している。中国のロボット市場は、世界でも最も大きく、産業向けの市場規模だけでも144億9,000万ドルにも及ぶ。中国には半導体製造関連でも、後工程の工場が数多く存在し、OSATなどに多くのロボットを含む多くのサーボモーターが供給されている。日本メーカーも中国市場を重視しており、2018年のデータでは、中国市場においてパナソニックが16%ものシェアを持ちトップに立ち、次いで安川電機が15%で2位につける。
そんな環境の中でShenzhen Inovance Technologyは年々売上高を伸長させており、2021年の売上高は前年比53%増の176億元を見込んでいる。同社のロボットはミドルからハイエンド向けに製造されており、中国におけるシェアは三菱電機よりも高く、3位につけている。同社のSV820Nは半導体製造装置向けに高速で正確な位置制御、速度制御、トルク制御を行えるとしている。
 日本の半導体製造装置が、世界に優位性を示してきた理由には、サーボモーターのような小型ながら、生産精度や生産量の向上に多大に貢献する部品でも優位性を発揮してきたからであると言える。しかし、サーボモーター最大市場の中国からShenzhen Inovance Technologyのような有力企業が出てきたことは、中国でも多くの売上を保ってきた日本企業にとっては逆風と言える。今後、さらなる高回転化や省電力化といった技術を進化させて行くことが、サーボモーター市場確保の鍵になるだろう。

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