2023年のシリコンウエハの生産状況と展望

2022年後半から、メモリを中心に半導体需要が急激に落ち込んだが、各半導体メーカーは在庫が減少したことによって、生産が減少した2020年後期〜2021年の教訓から、年内は積極的にウエハの購入を続けた。その結果、各ウエハメーカーの2022年度の業績は絶好調で推移した。しかし、2023年は更に需要減少が激しい上、サムスンのような低迷期でも積極的に生産を継続してきた企業も赤字に耐えきれずに生産量を落とすなど、シリコンウエハメーカーの業績にも影響が生じるようになった。 今回は各シリコンウエハメーカーの上半期の動向を追いながら、半導体産業の今後の展望を探った。

SEMIの全体出荷面積

SEMIが発表した2023年1~3月期の出荷面積は32億6,500万平方インチと、前年同期比11.3%減、前四半期比9%と大きく落ち込んだ。 SEMIのSilicon Manufacturers Groupによると「シリコンウェーハ出荷の減少は、今年初めからの半導体需要の軟化を反映している。メモリと民生用電子機器の需要が最も落ち込んでいる一方で、自動車と産業用アプリケーションの市場は安定している。」とコメントした。

各社の2023年1~3月期業績

 各社の業績は以下のようになった。


在庫調整によって、多くの企業が対前期比では減少しているのに対して、対前年同期比ではSiltronic以外の4社が売上を増加させている。

信越化学工業

信越化学工業の電子材料部門の2023年1〜3月期売上は、2,031億円となり、前年同期比5.7%増、前期比では、14.8%の減少となった。前期比から減少した理由としては、前期と比較してウエハの出荷が1割減少したことによる。 一方で、4~6月期は、7〜9月期に回復することを見越して、1~3月期からは需要が回復すると見ているが、在庫調整が当初の想定より長引いていることもあり、7〜9月期で再び在庫調整局面に入り、需要が低下する可能性もあるとしている。

SUMCO

TSMC向けに、ハイエンドデバイス用のエピウエハを提供し、業績を拡大させてきたSUMCOだが、2023年1~3月期の決算は前年同期比9.4%増、前期比6.3%減の1,099億円と、前期比では減少したものの、前年同期比はプラスで推移した。 300mmはメモリ向けで大きな調整があり、200mmも民生、産業用途では調整が開始したとしているが、300mm、200mm共に契約価格は守られており、大きな落ち込みとはならなかった。 第二四半期の予測では、前期比1.7%減の1,080億円とほぼ横ばいにとどまり、1~6月期では前年同期比5.0%増と、好調だった昨年を上回る形で推移している。4〜6月期では、300mmはメモリ、ロジック向け双方とも、生産調整の影響から販売数量が後ろ倒しとなっているが、同社では2023年後半を需要のボトムと想定し、2024年には、需要が回復し、伸長すると見ている。

用途別の予測では、データセンター向けは2022年比で1%程度の減少、スマートフォンでも1%程度の減少、メモリでは、200mmは車載向けでは順調な需要となっているが、産業用途では調整が継続している。

GlobalWafers

Global wafersの2023年1〜3月期は、186億1,600万NTドル(約865億6,400万円)と、前年同期比14.1%増と好調に推移した。1〜3月は各月共に前年の月間売上を2桁%上回り、主要Siウエハメーカーの中でも最も好調であった。 しかし、同社の4、5月の売上高は4月が前年同月比7.2%増、5月が1.41%減と成長率で見ると下降線を辿り初めており、本格的な調整期間に入った可能性がある。。

SK Siltron

SK Siltronの2023年1〜3月期の売上高は、5,800億ウォン(約636億1,200万円)となり、前年同期比4%増、前期比1%増とプラスで推移した。200mmウエハは売上高が14%の下落となったが、300mmウエハでは8%増と、メモリによる影響が大きいと推測される韓国企業だが、現在の市場の停滞を考慮すると好調であったといえる。これは半導体メーカーと長期供給契約を締結していることから、価格の下落や注文のキャンセルに影響されなかったことが要因と見られる。 一方で4~6月期はSamsungなど、半導体メーカーの稼働率が低下することによって、需要が低下すると見込んでいる。しかし、長期供給契約によって、収益は維持されると見込む。

Siltronic

Siltronicの2023年1〜3月期の売上高は、前年同期比3.0%減、前期比14.3%減の4億400万ユーロ(約626億2,000万円)と、大きく減少した。出荷面積の減少と米ドルでの売上が大きかったことによる米ドル/ユーロの為替レートの悪化(対前期比)が業績に響いたとしている。車載半導体の好調で2023年の半導体市場予測も前年比プラスとなっている同社の本拠地である欧州(ユーロ)だが、Siltronicの売上比率は9%と、決して大きくはないようだ。 同社では4~6月期の予測は1〜3月期同等としており、2023年全体では、在庫削減によってウエハ需要が前年比10%以上減少すると予測している。

Siウエハ市場は2024年以降の市場拡大サイクルを見据え大きく落ち込まず

このように、半導体メーカーは需要が低下しているものの、今年後半以降にまた需要が戻ることを見越して、ウエハメーカーとの長期供給契約によってウエハの購入を大きくは止めていないことが見て取れる。 また、好調な車載半導体が、ディスクリートやアナログを中心に大きく売上を伸ばしていることや、300mm化を推進していることも大きく落ち込まなかった要因の一つと言えるだろう。主要Siウエハメーカーは在庫調整の底を第二〜第三四半期頃と見ているが、2024年には半導体が今後再び旺盛な需要に戻ると言われており、各半導体メーカーは規模の大きなウエハの買い控えをせずにしっかりと在庫を確保し、調整期間を終えるだろう。

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