真空バルブ

微細化に対応して求められる高品質化

 半導体製造におけるキープロセスであるドライエッチング、スパッタリング、CVDなどはいずれも真空装置であり、プロセス処理を行うプロセスチャンバ内は高品質な真空が必要とされる。真空の質や真空にするまでの時間などの制御性などに影響を与える真空バルブにも高品質化、小型化などが求められており、バルブメーカも、遮断性能や対電圧性能に優れた材料開発、バルブの開閉を行う接点構造の開発などを進めている。
 真空バルブでは装置側の要求を取り込んで開発を進めていくために、装置メーカとの連携が重要になってくる。また、装置の信頼性の面でも装置メーカは実績あるバルブメーカの製品を選ぶことになる。このため、実績のあるバルブメーカとの関係が深くなり、後述するようなバルブメーカの寡占化が進む要因にもなっている。
 真空バルブは、機能によって真空チャンバへのウェーハ出入口に置かれ、チャンバと大気間、真空チャンバ間を遮断するゲートバルブと、真空チャンバと排気ポンプの間に設置され、チャンバからの気体の排出など真空状態を構成するためのペンドロールバルブ(コンダクタンスバルブ)などがある。形状も角型や丸型の遮断板を開閉するタイプと弁の開閉で行うタイプがある。

2021年の市場規模は900億円台に成長

 真空バルブ市場は、高真空を利用するエッチング装置、CVD装置、ALD装置などの市場と連動して推移する。ただし、各装置で使用される部品であることから、装置の製造に先立って、発注・納入されることから、市場の動きは製造装置に先行することなる。
 このため、2019年の落ち込みのあと、2020年には前述の製造装置市場を上回る前年比42.4%の成長を遂げ、768億6,000万円に拡大した。2021年は前年に大幅に成長したことから相対的に低くなるものの、前年比18.6%増の911億1,700万円にまで拡大することが予想される。

 真空バルブ市場には日本、海外から非常に多くの企業が参入している。企業の業種も、バルブ自体を中心とする企業、真空関連機器の一貫として真空バルブを提供している企業、真空ポンプの関連部品としての提供している企業など様々な形で事業態がある。
 参入企業としては、海外では米MKS Instruments社、米HVA社、米Kurt J. Lesker社、スイスVAT社、独Pfeiffer Vacuum社、台湾HTC社、国内ではブイテックスCKD入江工研アルバック、キッツSCT、旭精機、フジ・テクノロジー、佐藤真空、キヤノンアネルバなどがある。
 参入は多いが、リーディングカンパニーであるVAT(シェア57%)、第2位のMKS Instruments(20.4%)の2社で80%近いシェアを占める寡占市場となっている。3位Pfeiffer Vacuum、4位ブイテックスのシェアは、それぞれ4.1%、3.4%で上位2社とは一桁違いとなっている。

上位企業の動向

 上位企業の動向をまとめる。

VAT
 同社は真空バルブのトップメーカで、半導体、FPD、大陽電池の製造装置向けのほか、一般真空機器向けの製品を
 これらの製品分野でも、半導体製造装置向けに力を入れており、「世界の半導体製造装置向け真空バルブ市場の70%を占めている」としている。当社の調査でも57%という高いシェアを獲得している。
 2020年の半導体製造装置向け真空バルブの売上高は、ファンドリ、ロジックデバイス向けの成長装置市場の拡大に牽引され、前年比45%超と大幅に成長した。2021年に関しても10%以上の成長が期待される。売上増に対応して、バルブの修理・洗浄などのサービス事業も今後2~5年間は成長が続くと予想している。
 半導体向けを中心とした最先端バルブの製造はペナン工場(マレーシア)で行なっており、同工場は同社バルブの30%を製造を担う主力工場でもある。

MKS Instruments
 同社は真空・気体の制御・計測機器の総合企業で、真空バルブはバルブソリューション部門が担当している。真空バルブを含む真空・分析関連事業のうち、半導体関連は約85%を占める34億7,000万米ドルなった。前年比では58%増と大幅に拡大。真空バルブに関しても前年比60%増の成長を記録した。2021年についても同16%増が見込まれる。
 販売先としては、欧米の製造装置メーカが中心。米Applied Materials(AMAT)、Lam Research社への売上高は、2020年度でそれぞれ売上高全体の10.6%、13.5%を占めている。

Pfeiffer Vacuum Technology GmbH
 真空ポンプ(ターボ分子ポンプ、ドライポンプ)、真空計測機器、チャンバ、バルブなどの真空関連機器、サービス、コンサルテーションを提供している。真空ポンプが中心で、バルブの売上比率は小さい。真空バルブはパートナー企業であるNor-Cal社が製造している。

ブイテックス
 真空バルブの総合メーカとして、ゲートバルブ、ペンドロールバルブをラインナップしており、小口径から大口径まで、様々な業界・装置向けに提供している。特に製造装置など半導体向けの比率は50%程度に達しているものと推定される。半導体以外では2020年には、成膜装置など有機EL製造装置向けの需要が拡大している。
 2019年1月には東海工場内に半導体製造装置向け製品の新工場棟を建設、生産能力を拡大している。

その他企業の動向

 その他の海外企業のうち、代表的な企業(当社調査で1%以上のシェアと推定されている)の概要をまとめる。
HVA社は米Applied Material(AMAT)社のCVD装置、イオン注入装置にゲートバルブを中心に納入しているが、現在は最先端よりも成熟装置向けの供給が中心となっている。生産拠点は米ネバダ州リノ。日本国内ではナガセテクノエンジニアリングが販売、メンテナンスを行っている。
 米Kurt J. Lesker社は真空ゲートバルブを中心に事業を展開している。
 台湾HTC社は、自社製造の真空バルブ、フランジなどの製造、販売のほか、日米欧の有力真空ポンプメーカ、バルブメーカの製品について台湾国内でサービス事業も行っている。
 国内企業のうち、フジ・テクノロジーは真空バルブの専業メーカー。研究開発用装置向けのカスタム対応などが事業の中心で量産装置では各装置分野でトップベンダーではなく、ユーザーがバルブの入手を安定化させるための複数購買の対象企業となっているものと推測される。、
 入江工研は真空バルブやバルブで使用されるベローズなどを提供している。真空バルブについては売上高の50%以上が半導体向けと見込まれる。特にスパッタリング装置、イオン注入装置など、超高真空が要求される分野に強い。
 真空機器へのサービスを主な事業とする旭精機は、テクノロジーセンターで真空バルブの受注生産を行っている。
 CKD、キッツSCTはガス系の高純度バルブが中心だが、高性能バルブの一貫として、真空バルブも提供している。
アルバックは真空の総合メーカとしてバルブも提供しており、アルバック・グループとしてポンプなどと組み合わせて、トータルな真空ソリューションの提供に力をいれている。キヤノンアネルバもクライオポンプなど高真空事業を展開しており、真空バルブもその一環である。佐藤真空も真空ポンプ、各種真空機器の製造・販売が中心となっている。

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