急速に拡大するSiC基板と応用市場動向

温室効果ガスを発生させる化石燃料の使用を、全世界的に抑制する動きが高まっている。それにより、欧米や中国を中心に、自動車の動力をガソリンエンジンからバッテリー式の電気自動車に置き換える動きが急速に高まっている。

バッテリー式電気自動車において、バッテリーから得られる電気は直流電力となるが、モーターを動作させるためには、交流電力に変換する必要がある。この変換する装置がインバータと呼ばれる装置になる。インバータは、スイッチを高速に動作させ、制御することで電力を自在に出力する機能がある。この電力の制御や供給を行う半導体デバイスを、一般的にパワーデバイスと呼ぶ。電気自動車向けには、従来は耐圧性能が比較的高いIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)が用いられていたが、スイッチング損失が大きいという問題があり、その結果発生する発熱によって高周波駆動には限界があった。そこで、より「高耐圧」、「低オン抵抗」、「高速動作」を可能とし、更にはバンドギャップがSiの3倍広いSiCが注目されてきた。

このSiCを一躍メジャーにしたのが、アメリカの破壊的イノベーター、イーロン・マスクが率いる米テスラのModel3である。Model3のインバーターには、1ユニットあたり24個、更に充電器にも12個のSiC MOSFET、12個のSIC SBDを搭載しており、ロングレンジ仕様では航続距離689Kmのロングライフを実現している上に、0-100km加速も4.4秒と、一流スポーツカーと同等の加速性能を持ち合わせている。

テスラの採用をきっかけに、他社もSiCパワーデバイスを用いたインバータを続々採用しており、その結果、SiCパワーデバイスメーカー、SiC基板メーカーは積極的な投資を行い、生産を拡大している。

それに伴い、SiCウエハ市場も急速に拡大している。2022年のSiCウエハ市場は、461億6,400万円と推定され、これは前年比39.8%増となる。2021年から2022年にかけて、SiCウエハメーカーは各社共に記録的な伸びを記録した。

今回の特集では各SiCウエハメーカーの動向を追っていく。

続きをご覧いただくにはログインしていただく必要があります。

注目企業