2021年4月-6月 半導体材料企業の売上高動向
掲載日 2021/09/17
半導体市場の好調により半導体材料の需要も拡大が続いている。これは半導体材料企業の業績にも反映され、材料各社は好調を記録している。特に多くの半導体材料分野で大きなシェアを占める日本企業でその動きは顕著である。本稿では、代表的な日本の半導体製造装置企業の2021年第2四半期(2021年4月~6月)の売上状況をまとめる。
200mmウェーハ需要の好調続く
半導体材料のなかで大きな比率を占めるシリコンウェーハの需要は活発で、SEMIの調査では、2021年第2四半期のシリコンウェーハの出荷量は前年同期比12%増の35億3,400万平方インチとなった。前四半期に比べても6%増で、四半期売上高としては過去最高を記録した。
この動きを反映して、シリコンウェーハ市場をリードする日本メーカの業績も好調を維持している。
信越化学工業
信越化学工業の電子材料事業の同期(2021年4月~6月)の売上高は、1,611億300万円で前年度同期比11.6%増、前期比2.9%増となった。
2021年度(2022年3月期)から電子材料事業には、半導体用シリコンウェーハのほか、半導体用封止材料、フォトジレスト、マスクブランクスなどを含んでいる。2020年度(2021年3月期)までは、半導体シリコン事業と電子・機能材料事業を別々に報告していたが、2021年度からは半導体シリコン事業と電子材料事業を合わせて電子材料事業として業績を発表している。表中の前年度実績、前四半期実績は半導体シリコン事業と電子・機能材料を合わせたものとなっている。
半導体シリコンの売上高は2020年度通期で3,740億円、電子・機能材料と合算した電子材料事業の売上高に占める比率は61%となった。2021年度第1四半期においても電子材料事業+機能材料に占める半導体シリコン売上高の比率は61%、約1,540億円と推定される。
半導体シリコンについては、300mmウェーハだけでなく、200mmウェーハも売上を伸ばした。需要はロジックを中心に力強く、生産能力の増強が求められているが、能力増強は顧客との契約をベースに逐次行っていく計画である。レジスト、マスクブランクスではEUVリソグラフィ向けに売上を伸ばしている。
SUMCO
SUMCOの2021年4月~6月期(2021年12月期第2四半期)売上高は818億3,900万円となった。前年度同期比9.3%増、前四半期比7.8%増となった。同期はPC・スマートフォン・データセンタ向け需要に牽引され、300mmロジック向けウェーハでは需要に供給が追い付かない状況が続き、メモリ向けもDRAMを中心に回復基調となった。また、200mm以下の小口径ウェーハも、車載・民生向け需要の拡大により、需給がタイトになってきた。
2021年第3四半期については、ロジック向け、メモリ向けともに需要が好調で、860億円の売上高を見込んでいる。また、200mmウェーハについても好調を需要を持続しており、供給能力が追いついていない状況である。
EUV向けレジストが成長の鍵
フォトレジスト市場も東京応化工業、JSRという日本企業が大きなシェアを占めている。両社ともEVUレジスト開発に力を入れている。
東京応化工業
同社はフォトレジスト(半導体向け/LCD向け)、パッケージ材料、MEMS材料などを、エレクトロニクス機能材料事業として展開している。同事業の2021年4月~6月期(2022年3月期第2四半期)売上高は、194億3,700万円で、前年度同期比18.0%増、前期比7.2%増となった。
同事業の製品分野別売上高構成比率は、g+i線レジストが14%、KrFレジストが31%、ArFレジストが21%で、半導体向けレジスト(EUV向け除く)合計で66%を占めている。このほか、LCD向けレジストが6%、パッケージ材料など高密度実装材料が19%を占めている。その他製品の売上高は9%だが、その中にはEUV用レジストが含まれている。
2021年12月期の同事業売上高は前年度比14.9%増の757億円と予想している。
JSR
同社は半導体材料、ディスプレイ材料、エッジコンピューティング関連などを合わせてデジタルソリューション事業として展開している。2021年4月~6月期の同事業売上高は前年度同期比8.1%増、前期からは横這いとなった。このうちフォトレジストを中心とする半導体材料事業の売上高は、261億円で前年度同期比9%増、前期比で5%増となった。多層材料が前年度同期比10%増、EUVレジストを含むArF向けを除くフォトレジストが前年比25%増と大きな成長を遂げた。
2022年3月期通期売上高見通しは、デジタルソリューション事業全体で1,600億円、半導体材料で1,025億円と予想している。
2021年9月17日には、EUV用メタルレジストメーカである米Inpria社の買収を発表した。 Inpria は2019年に稼働を開始したスタートアップ企業で、同社のメタルレジストはEUVリソグラフィにおいて世界最高性能の限界解像度を達成している。
同社では今回の投資を含めてEUVレジスト事業は2024年度に向けて年率50%(CAGR)の売上高成長を見込んでいる。
パッケージ基板、新規設備が成長を後押し
パッケージ基板は、2020年後半から先端分野向けに需要が急速に拡大している。これに伴い、パッケージ基板材料メーカの売上高も2021年度には大きく成長すると予想されている。
イビデン
パッケージ基板、マザーボード・プリント配線板(MLB)からなる電子事業の売上高は524億5,000万円で、前年度同期比51.0%増、前期比12.3%増となった。
パッケージ基板事業では、パソコン向けの需要が好調に推移したことに加え、2020年度から量産を開始している大垣中央事業場における最新鋭のICパッケージ基板製造ライン(第1期投資)が安定量産に移行した。これにより同事業の売上高が前年度比で50%以上と大幅に拡大した。マザーボード・プリント配線板(MLB)事業は前年度同期比横這いとなった。
京セラ
半導体関連部品事業の同期売上高は697億2,400万円で、前年同期比24.2%増となった。2021年3月期第4四半期が売上高を伸ばしたこともあり、前期比では微減となった。半導体関連部品事業では、5Gや自動車関連市場向けセラミックパッケージ、有機基板の需要増が売上増につながった。
2022年3月期通期売上高は前年度比6.2%増の2,800億円を予想している。
新光電気工業
同社はパッケージ基板、リードフレーム、セラミック静電チャックなどの半導体関連部品、材料が事業の中心。2021年4月~6月については、半導体関連の全ての分野で実績を伸ばし、売上高は580億6,600万円で、前年同期比37%増と大幅な増収となった。前四半期と比較しても10.5%増を記録した。ICパッケージ事業の売上高は前年度同期比33%増の381億円、ICリードフレーム事業は同54%増の109億円、静電チャックを中心とする気密部品事業は同35%増の90億円となった。
第2四半期も引き続き好調に推移すると見込んでいる。第3四半期以降については、リードフレーム、セラミック静電チャックは引き続き好調が予想されるものの、フリップチップタイプパッケ-ジは製品構成の変化などを背景に、期初の想定より売上が減少すると見込んでいる。
住友ベークライト
半導体関連材料事業の売上高は174億7,700万円で、前年度同期比38.5%増、前期比7.7%増となった。半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、世界的な半導体需要の拡大により大幅に増加した。感光性ウェ-ハコート用液状樹脂は旺盛なメモリ需要に牽引され、成長した。また半導体用ダイボンディングペーストも売り上げを伸ばしている。半導体パッケージ基板材料についても、5Gスマートフォンの需要増加などで売上収益は増加した。
2022年3月期の半導体関連材料事業の通期売上高については前年度比6.5%増の610億円と予想している。
同社は中国子会社(蘇州住友電木)に最新設備による新ラインを導入、同工場における半導体封止材の生産能力を1.5倍に拡大する計画を発表している。新ラインは2022年初頭の稼働開始を計画している。
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