現在の半導体市況との関連は?高成長続く2022年のSiウエハ市場

2022年下半期に入り、半導体市場は調整期に突入し、半導体メーカー各社の79月期の決算を確認していくと、MPUDRAMNANDといったメモリを生産する企業を中心に軒並み売上を大きく落とした。その結果、NANDフラッシュメモリ世界第二位であるキオクシアは生産調整を発表し、TSMCなど大手の半導体メーカも設備投資金額を減額し始めた。大手の半導体メーカーが売上を落とす一方で、ほとんどの半導体の主原料となるSiウエハは、2022年下半期に突入しても、需要が弱回るどころか、過去最高の出荷面積を記録しようとしている。


一方で、2023年は出荷面積が2022年から0.6%減となる146億平方インチになると見込む。

今回はシリコンウエハメーカー各社の決算も踏まえながら、何故半導体市場が弱含みしても、半導体シリコンウエハ市場が好調なのか、そして2023年以降の半導体市場とシリコンウエハ市場について考察していきたい。

1.好決算を記録する各シリコンウエハメーカー

各シリコンウエハメーカーの2022年第2〜第3四半期の決算結果を見ていくと、各メーカーともに好業績を記録している。各企業別に業績を追っていく。

信越化学工業 (日本)

業界最大手の信越化学工業の2022年度79月期の電子材料売上は前年同期比30.9%増、前期比30.4%増と大幅な成長を記録した。主力の300mm200mmは引き続き堅調に推移している。同社でも、年度内は好調に推移すると見ており、全社の業績でも、円安の影響もあるものの、7月時の予測から上方修正が入っている。しかし、2023年前半に調整局面のピークが来ると予測しており、2023年の売り上げが減少する可能性がある。

SUMCO(日本)

また、業界2位のSUMCO79月期の決算発表は好調で、第3四半期の売上高は前年同期比34.0%増の1,162億円となった。次四半期の見通しも、1,155億円と、第3四半期比で0.7%減にとどまり、好業績を維持する見込みだ。SUMCOでは、この好調の要因を、車載、データセンタによる需要が引っ張っていると見込んでいる。車載向けは、電気自動車をはじめとした電装品向けが需要の増加によって好調となっている。20227月には世界の新車販売の10%が電気自動車に達した。一方、データセンタ向けでは企業が投資を抑えたことによって、当初の見込みからは売り上げは減少している。同社の決算結果からは、主力である300mmエピタキシャルウエハは2022年の第二四半期まで、8期連続で在庫を減らしていたが、2022年の第3四半期から再度在庫を積み上げた。しかしながら、需要も同様に増加しており、今期は安定して推移する模様だ。同社の300mmポリッシュドウエハも在庫が2022年第3四半期から増加したが、エピタキシャル同様に需要も伸長を続けている。

SK Siltron(韓国)

7〜9月期の決算で大きく業績を落としたSamsung ElectronicsSK Hynixを顧客に抱える韓国のSK Siltron46月期は597億ウォンと、4~6月期の売上は前年比35.8%増となり、売上は大きく上昇していた。同社では今後、2026年までの5年かんで2,300億円を投じて、韓国の亀尾市の本社工場隣接地を買収し、300mmウエハを増産する計画を立てており、今後の半導体市場の更なる増加を狙っている。

Global wafers(台湾)

79月期の売り上げは前年同期比25.4%1805,300NTドルと推移した。同社の販売量の15%強をテストウエハが占めていることから、各地に新規半導体工場が建設される中で、テストウエハの需要も高くなったものと見られる。

Siltronic(ドイツ)

Global Wafersからの買収が破断となったSiltronicだが、同社の79月期の決算は前年同期比27.5%増、前期比7.2%増の474万ユーロと好調な結果となった。同社の主要な顧客となる欧州の半導体メーカーには車載半導体メーカーが多く、InfineonTechnologiesST Microなど各社が好調な業績だったことが影響しているものと見られる。このように、ここまでの決算を踏まえていくと、どのSiウエハメーカーも非常に好調な業績を記録した。2.なぜ半導体市場は調整局面にあるにも関わらずSiウエハは好調なのか?通常、Siウエハが完成品のチップになるまでは前工程で約3ヶ月、後工程で約1ヶ月を有する。このタイムラグを考えると、本来Siウエハの生産量は数ヶ月前から落ち込み始める兆候があっても良いはずだが、そうはならなかった。では、なぜSIウエハの需要は引き続き高いのだろうか。

2. 2022年のSiウエハの需要が高い考えられる要因

①    各地で建設されている新工場へのテスト品で多く利用されている&試作向けに多く使用されている。

2021年に空前の半導体投資が行われたことによって、各地に急ピッチで半導体工場が建設されている。通常、テストウエハの流通量は全てのウエハの約10%にも相当するが、新工場では、立ち上げのために様々な検証や試作が必要になり、テストウエハの使用量は拡大しており、ウエハが大量に消費されている可能性がある。

②  半導体分野の裾野が広がり、今まで使用されなかった部分でも半導体が使用されている。

半導体が使用される分野がこの数年で広がったことによって、スマートフォンやHPC向けにロジック、メモリを製造しているメーカーの減収は目立ったが、車載向けや産業分野向けにアナログやFPGAASIC、パワーデバイス、センサを供給している企業は決して業績は衰えていない。信越化学工業の10/27の決算発表でも、「半導体デバイス市場の調整色が強まっている一方でDXGX、電気自動車向けなどの新しい分野は今でも堅調に推移し、半導体の裾野は広がっている」としており、全ての製品の調整色が強いわけではない。国内の半導体デバイスメーカでは、車載半導体を生産するルネサスエレクトロニクス、パワーデバイスを供給するロームや富士電機、そしてイメージセンサのソニー、海外メーカでは産業向けにアナログデバイスやイメージセンサを生産するOnsemiconductor、車載半導体を供給するInfineon Technologies社、ST Microelectronics社は、業績が好調に推移している。現在の半導体市場は、スマートフォンやPCといったコンシューマ向けでは需要が一段落しているものの、データセンタ、ADASIoTといったキーワードに代表されるデータセンタ向けHPCGPU、車載用SoCASIC、パワーデバイス、企業の設備投資が2021年の半導体不足や、新型コロナウイルスへの対策による中国の操業停止などによって思うように進展せず、後ろ倒しして伸長している可能性がある。

一方、今後は半導体の在庫調整が2023年の前半にピークを迎えるという声もあり、今後、金利の引き締めによる株価の下落や物価の上昇に伴って企業が設備投資判断を遅らせ、消費者が更に出費を絞るようになると、Siウエハ市場の2023年の成長は厳しくなって行くと見られる。

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