市場停滞するものの、大口径化と新技術で高いコスト競争力を目指すSiC半導体

掲載日 2024/10/15

これからEV市場が世界の自動車市場を席巻するという予測の基に自動車メーカー各社は積極的な目標を立てて動いていたが、ここに来て減速傾向が強まっている。米Teslaの2024年上半期は前年同期比7%減の83万台と初めて前年を下回った。スウェーデン自動車大手のVOLVOはすべての新車を2030年までにEVにするという目標を掲げていたが、それを撤回した。トヨタ自動車も、2026年のEVの販売計画を年産150万台にするとしていたが、2024年9月には100万台程度になるという見方を示した。

一方、高性能EVのインバータに組み込まれているSiCパワー半導体も現在は影響を受けていると見られるが、その原材料となるSiC基板を生産する企業は技術的な改善を行い、製造コストの低減を目指している。今回の特集ではSiCパワーデバイス/基板の最新動向を追っていく。

多結晶SiC基板と単結晶SiC基板の貼り合わせによって製造コストを削減

SiCウエーハ製造におけるコスト、環境負荷の低減のため、住友金属鉱山の子会社であるサイコックスや、SiCエピタキシャルウエーハ世界トップシェアのレゾナックが取り組んでいる。

貼り合わせSiCウエーハは、多結晶SiCのサポート基板上に高品質な単結晶SiCウエーハを貼り合わせることで、SiC単結晶の特性を維持しながら、基板全体の低抵抗化や高強度化を実現可能とした。また、SiC単結晶基板は貼り合わせによって製造に膨大なエネルギー(コスト)がかかるが、サイコックスでは単結晶SiCと多結晶SiC基板を常温接合後に熱剥離することで、剥離後に多結晶基板上に薄い単結晶層を形成する。これによって剥離した単結晶SiC基板は再利用することが出来る。(図1)最大で1枚の単結晶SiC基板から50枚以上貼り合わせSiC基板を製造可能。その他にも低抵抗やバイポーラ劣化の抑制、高い曲げ強度を利点としている。2024年9月には、鹿児島県の大口工場でこの貼り合わせSiC基板の8インチ量産ラインを構築することを決定したことを発表した。


図1 多結晶基板と単結晶基板のプロセスフロー図

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