精密XYステージ

精密XYステージ、リソグラフィ装置、検査・測定装置に採用

 半導体製造装置に搭載されるウェーハステージとしては、リソグラフィ装置、検査・測定装置で使用される高精度位置合わせが可能な精密XYステージ(Z方向、傾きθの動きを含むものもある)と真空プロセス、プラズマプロセスを行う際にウェーハを保持するウェーハステージがある。本稿で精密XYステージを対象とする。X軸、Y軸のみの位置合わせステージも同ステージに含んでいる。
 リソグラフィ装置、検査・測定装置で採用されている。これらの用途ではnmレベルの超精密制御が求められている。同時に生産を高めるために、高速動作が必要となる。動作速度の向上に伴い、慣性が大きくなることから正確な位置決めは難しくなる。動作時、停止時のウェーハに掛かる力も大きくなるが、これを吸収するために厳密な動作制御が必要とされている。
 また、ボンディング装置などの組立装置でも精密位置合わせステージが使用されているが、要求精度は先の装置分野よりも緩いものとなっている。また、X軸、Y軸の2軸ではなく、1軸動作が主流となっている。
 リソグラフィ装置では重ね合わせなどのプロセス品質、生産性など、装置性能を左右するキーモジュールであることから、自社での開発(共同開発)を行っている。
 ASMLのEUVスキャナにはウェーハを保持するテーブルを2つ搭載した高精度ステージを採用している。ニコン、キヤノンも自社で開発、製造をおこなっている。
 電子線(EB)マスク描画装置、EB直接描画装置についても、リソグラフィ装置レべルの高精度が求められている。
 検査装置では、欠陥検査装置、パターン検査装置では、リソグラフィレベルの高精度ステージの搭載が進んでいる。
 位置決めステージ部とステージの動作を制御するガイド部、ステージを動かすモータ部で構成される。ステージ部では、動作のガイド構造として、レール部とステージを非接触することで、抵抗を抑え、高精度、低発塵を実現するため、磁気浮上・駆動を行うリニアモータ・タイプ、エアフロートでステージを浮かせるエアスライド・タイプがある。
 駆動方式としては、サーボモータでボールネジを回転せて動かすタイプ(ボールネジ+モータ)、リニアモータによる直接駆動タイプ(リニアモータ)がある。ボールねじによる駆動は、簡便な方法として最も多く使用されているが、高精度が求められる分野ではリニアモータタイプが中心となっている。

ロボット関連企業がハイエンド分野で実績

 精密ステージは装置一台あたりの搭載数は基本的に1つであり、ユニット価格についても同一装置内で大きな変化はない。このため、装置市場の動きに連動している。
 価格はボールねじ駆動の単軸タイプで100万円以下のものから、最先端のリソグラフィ装置で使用しているステージは数億円相当に達している。
 露光描画装置・検査装置向け 精密XYステージの市場規模 は内製分を含むめて、2020年には前年比20%増の537億円に達している。2021年は同13%増の610億円と予想した組立装置などでは1軸の位置決め機構が中心で価格も安いことから、本稿での市場規模推定の対象からは除外している。

 

 精密ステージ市場には多くの企業が参入しているが、ハイエンド分野では動作制御技術に優れたロボット関連企業が実績を残している。
 住友重機械工業は2001年にリソグラフィ装置向けに高精度XYステージを発表以来、リソグラフィ装置向け、高精度検査装置向けステージで大きな実績を残している。真空エアサーボステージ「CA-230」が実績を伸ばしている。真空状態で高速・高精度に動作してナノレベルの位置決めが可能となっている。
 真空外での対応機種としては、露光・高精度検査装置用XYステージ「SA/SL」シリーズが中心となっている。同ステージは高い速度安定性(上軸1,000mm/S)、位置決め精度を達成、独自の反力処理機構により高速高加減速(1m/s)時における高精度駆動を実現している。
 ロボット分野で実績のある安川電機は、半導体装置向けにnmレベルの超精密位置決めと、滑らかで正確な移動を可能とする超精密XYエアステージを開発した。エア浮上/エアベアリングで非接触化を実現、駆動はリニアモータを採用している。
 リニアモータによる駆動システムで、半導体製造装置のウェーハ搬送システムで実績のあるシンフォニアテクノロジーは、高密度(HD)リニアモータのダイレクト駆動による超薄型精密位置決めステージを開発している。同製品は、位置決め分解能0.1μm、繰返し精度±0.1μmという国内最高レベルの位置決め精度を実現している。また、モータの発熱が低く、ウェーハへの影響が抑えられている。
 モーショントラストは、分解能0.4nmという超精密なサーフェイス型エアスライダステージを製品化している。
 THKはLMガイド、アクチュエータ、ボールネジなどの駆動部品のメーカ。それらを組み合わせて高精度のステージを開発している。XYステージの「A/AXシリーズ」、精密アライメンステージ「CMX」シリーズなどを製品化している。「CMX」は検査装置、組立装置などに採用されている。ベース・トップテーブル間の四隅に、クロスLMガイドとクロスローラーリングを組合わせたモジュールを平面配置する独特の構造を採用し、超薄形構造を実現している。
 NSKはエアスライドタイプの精密ステージを提供している。主力製品はXY11。駿河精機は自動水平面Z軸ステージを製品化している。従来機種から移動量と最高速度がを2倍に高めている。
 ロボット、高精度位置決めシステムなどの分野であり、XYステージも日本企業が大きな実績を残している。海外企業では、AttocubePhysic Instruments(PI)、Dover MotionReliant Systems(RSI)などが検査・計測装置向け、研究開発向け装置などに応用されている。Attocubeはピエゾ駆動のナノ位置決め制御ステージ、PIはnmレベルでの位置合わせ精度に対応できるリニアモータステージを計測装置向けに提供している。

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