チラー:2021年は22%増の見込み

掲載日 2021/07/09

プロセスの高度化に伴い需要拡大

 半導体製造プロセスではナノレベルの加工制御が必要になっており、プロセスの環境、使用する材料の温度制御による加工精度が、プロセス品質を保つためにより重要になっている。このため温度の維持・制御を行うチラーに求められる性能も高くなり、製品価格も上昇している。
 チラーはエッチング装置、CVD装置、PVD装置、イオン注入装置など、真空装置を中心に高性能製品の採用が広がっている。さらに、洗浄/ウェットプロつセス装置、テスト機器、組立装置でも使用例が増しており、市場規模の拡大につながっている。しかし、精度、冷却能力などは真空装置で要求されるほどには厳しくないため、価格は抑えられている。
 半導体製造装置用チラーには液冷方式と空冷方式、高精度の温度制御が必要とされる用途ではペルチェ素子が使用されている。 ペルチェ素子 採用製品(以下ペルチェ式)は小型化にも適しているが、冷却能力(熱交換能力)の点では液冷、空冷方式よりも小さくなっている。エッチング装置などのが先端プロセス分野では、ペルチェ式チラーの採用が進んでいる。
 温度制御精度は高精度ペルチェ式では±0.01℃~±0.05℃程度、設定温度は低いもので-10℃から対応している。

2020年には前年比25%増

 チラーの市場規模は2019年には半導体製造装置市場に連動して、前年比18.2%減の489億7,200万米ドルに低下した。2020年には製造装置に先行して回復、同25%増の612億円に拡大した。2021年には同22%まで拡大すると予想される。
 搭載チャンバ数の増加により装置システムたりの必要チラー台数が増加、さらにプロセスの高精度化に対応するため単価も上昇していることも市場拡大を後押ししている。
 特にエッチング装置では、チラー対する要求性能の高度化に対応するため製品価格も上昇、装置1台当たりのチラー搭載数も増加、チラー売上高全体の60%程度を占めているものと推定される。
 また、既存装置の性能向上を図るためにが、チラーの買い替え需要も増加している。

参入メーカーの動向

 半導体製造装置向けチラー市場には多くの企業が参入している。参入企業としては、日本のSMC伸和コントロールズダイキン工業タイテックミラプロ、米Thermo Fisher Scientific社、Solid State Cooling System社、韓国のFine Semitech(FST)社、UNISEM社など。日本、欧米、韓国など様々な地域の企業が製品を投入している。
 この中で10%以上のシェアを占めていると推定されるのはSMCと、Thermo Fisher Scientificの2社のみで、その他のメーカは日本、米国、韓国の各地域のユーザー(製造装置メーカ、半導体メーカ)向けの製品提供が中心となっている。
 SMCは空冷式、冷凍式のサーモチラー・シリーズとペルチェ素子式のサーモコンシリーズをエッチング装置、洗浄装置、コータ/デベロッパ、CMP装置などに販売している。それぞれ「HRZ-F」、「HEC」シリーズが主力製品となっている。
 伸和コントロールズは、ユーザの要求に合わせたカスタム製品として高精度チラーを主力とする。
 ダイキン工業は総合空調メーカーとして大型・大能のタイプからコンパクトタイプまで多様なチラーをラインナップし、半導体製造装置で使用するような小型タイプの実績は少ない。
 タイテックは研究開発分野への製品提供が中心だが、半導体製造装置向けには小型CHシリーズを製品化している。精密タイプでは温度範囲は-10℃~+80℃、温度精度は±0.5℃となっている。冷却能力を1.3kWに強化した製品を提供している。また、高温冷却にも対応している。
 ミラプロは、極低温(-70℃)から高温(+145℃)まで幅広い温度制御が可能で、かつ低温、高温切替え機能を搭載したハイスペックチラーを提供している。半導体製造のビルドインタイプ、世界最小クラスのコンパクトサイズのコンパクトチラーは、世界の半導体市場に約1,000 台の稼働実績がある。
 Thermo Fisher Scientific社は、総合科学機器メーカ。チラーでは、ThermoCillシリーズが主力製品。同シリーズは汎用性が高く、カスタマイズへの対応にも取り組んでいることから様々な用途で使用されている。
 Solid State Cooling Systemはチラーの専門メーカで、冷媒(液冷)タイプ、空冷タイプからペルチェ素子タイプまで、さまざまな製品を小型・高精度製品として、冷却能力も160W~5,000W、オプションとして14,000W製品も備えている。半導体向けの主力製品はThermoRackシリーズで、特にペルチェ式の「ThermoRack 1201/1801」は主要エッチング装置メーカーに納入実績を残している。
 FST社では、温度制御事業部門(TCU)でチラー事業を行っている。高精度のペルチェ素子タイプが主力製品となっている。
 Unisem社は売上の70%以上が韓国国内向け。特にSamsung Eectronics向けが全体の約60%、韓国国内向けの80%程度(台数ベース)を占めている。装置への組み込み可能な冷媒タイプの小型チラー「Cube2500」のほか外付けタイプのチラーも製品化している。
 今後さらなる市場の拡大の中で、SMCと米Thermo Fisher Scientificを中心に各メーカのシェア争いが激化するだろう。

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