FOWLP用装置 種類と動向

掲載日 2022/12/07

1.FOWLPの構造と種類

  スマートフォンなどのモバイル情報機器では、徹底した小型化、省電力化が求められており、その要求にこたえるために先端パッケージ技術の採用が求められている。これらの製品では小型パッケージであるWLP(Wafer Level Package)が使用されている。WLPではI/Oパッドから外部端子となるBGAに向けてパッケージの内側に配線するファンイン配線構造を採っていた。しかし、プロセスの微細化、ダイサイズの縮小、多ピン化に伴い、WLPのBGAピッチも狭まる結果、ダイのI/OパッドからBGA電極までダイの外側に向けて配線するファンアウト(FO)構造を採用する必要が出てきた。これにより、スマートフォンを中心にFO構造のWLP(FOWLP)の需要が拡大している。
 FOWLPは、ダイ(チップ)再配線層(RDL)に配置する。その構造は「Chip-First(RDL-last)」と「Chip-last(RDL-first)」に大別できる。「Chip-First」構造では、ダイをSiウェーハなどの再配置基板上に配置し、その上でRDLを形成、樹脂封止、ダイシングをを行い、個別チップに切り分ける。「Chip-last」は支持基板上にRDLを形成したのち、チップを配置、樹脂封止、ダイシングを行う。さらに「Chip-first」構造では、チップを再配置基板を搭載する際に、チップの回路面を上にする「フェースアップ(Face-Up)」か、回路面を下にする「フェースダウン(Face-Down)」かを選択する。「Chip-last」は「Face-Dawn」となる。


2.企業別のFOWLP技術

 半導体、OSAT企業ではこれらの組み合わせによりそれぞれの製品に最適なFOWLP技術を開発している。独Infineon Technologies社が開発したe-WLB(embeded WLB)タイプは、chip-first/face-down構造をベースとしており、スイスSTMicroelectronics社、OSATのトップ企業である台湾ASE Technlogy Holdings社、中国JCET Group(STATS ChipPAC)社などが製造している台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)社がiPhoneのアプリケーション・プロセサ(AP)製造に応用した「InFO」プロセスは chip-first/face-up構造をベースとしている。
 世界第2のOSAT企業である米Amkor Technology社ではchip-last/face-down構造の「SWIFT」技術を開発した。現在は量産への応用は行っておらず、ハイエンド向けの研究開発を行っている。
 現在までFOWLPパッケージの大半はTSMCによりAP製造に応用されたものである。
 FOWLP、2.5D/3Dパッケージなどを含む世界の先端半導体パッケージ市場は2021年に113億米ドル、2022年には160億米ドルに拡大するものと見込まれる。その後も年率10%以上の高成長が期待できる(図)。


図 世界先端パッケージ市場推移


 市場拡大に対応するため参入各社では積極的な設備投資を行っている。フランスの調査会社Yole Dvelopment社の調査では、世界の主要半導体メーカーが起こっているフリップチップパッケージを含む先端パッケージング向け設備投資規模は、2022年は150億米ドルを達成する見込みである。主な半導体メーカ―別の構成比率では米Intel社が37%、TSMCが27%、ASE13%、Samsung Electronics11%などが10%以上の比率となっている。


3.FOWLPの製造プロセスフロー

 FOWLPの製造プロセスフローは、1)「チップの配置/封止」、2)「RDL層形成」に大別できる。

 1)「チップの配置/封止」では、チップの配置後、樹脂で封止する。face-up構造では、樹脂を研磨し接続用電極を露出させ、RDL形成に備える。face-down構造で支持基板から剥離、表面でRDL形成ができるようにする。
 チップの配置はPick&Place装置(maunter)、樹脂封止は封止装置、樹脂の研削はグラインディング装置で行う。

 2)「RDL層形成」はウェーハプロセスの技術を応用して行われる。下地絶縁層を支持基盤あるいはモールディングされたチップ上に形成する。RDLは配線層数は3層~5層、配線のLine&Spaceは2μm~5μm程度となっている。

 RDL層はプリント基板に使用されるSAP(Semi-Additive Process)技術を応用する。SAPでは絶縁膜にスパッタなどでシード層を形成、ソルダレジスト+露光で配線パターンを形成、銅めっきで配線、その後、レジスト、シード層を除去する。 2層目以降は絶縁膜形成以降を行っていく。下層の配線層とレーザーで加工した配線孔を通じて接続する。chip-last構造では、チップを配置するスペース、配線を形成しておく必要がある。 
 今後微細化が進めば、ダマシン構造に進むことが予想される


4.FOWLP向け装置と企業

  上記のプロセスフローで使用される主要装置と、各装置の主要メーカの動向を見てみる。FOWLPの量産化がはじまって日が浅いため、量産採用している半導体メーカ、OSAT企業も少ないことから、使用される装置も少なく、採用装置メーカも限られており、寡占市場となっている。芝浦メカトロニクスアピックヤマダといった組立装置メーカのほか、RDL形成加工を中心にリソグラフフィ、成膜、エッチングなどで前工程のプロセスが応用されている。このため、米Applied Materials社、Lam Research社、東京エレクトロンといった前工程分野で実績のあるメーカも導入されるようになっている。

 その一方、半導体メーカ、OSAT企業と共同で装置を開発、納入実績を伸ばしている企業も登場している。

 以下にFOWLP工程別装置に参入している企業を紹介する。

1)Pick &Place

(1)芝浦メカトロニクス

 同社製品はTSMCで採用され、大きなシェアを残しているものと推定される。主力装置は「TFC6500」。±1.0μmという高精度が特徴。

(2)Be Semiconductor(ベルギー)

 同社はJCUT Group(STATSChipPAC)を初めとするe-WLB製造の企業で採用されている。主力装置は「Datecon8800シリーズ」。

2)封止装置

(1)アピックヤマダ

 樹脂封止装置はTOWA、アピックヤマダ(ヤマハ・ロボティクス・ホールディングス)という日本メーカが実績を残している。このうちアピックヤマダはFOWLP向けにTSMCと共同で装置開発を行い、TSMC向け封止装置分野で独占状態にある。また。台湾、中国などのアジア圏のOSAT企業にも広く実績を残している。主力装置は「WCM-330」。さらに大型基板にも対応できるが「LPM-600」も製品化している。

3)研削装置

(1)ディスコ

 研削装置ではディスコが80%以上のシェアを占めているものと推定される。同社ではSiウェーハ向けにFOWLPを含む先端パッケージ向けに樹脂研削用の「DFG-8020」、「DFG-8030」を製品化している。

4)塗布装置

(1)東京エクトロン

 パターン形成用露光プロセスにおけるコータ/デベロッパ、RDL用絶縁膜であるポリイミド樹脂(PIM)の塗布装置などで実績を残している。

5)露光装置

(1)キヤノン

 パターンの微細化に伴い、FOWLP製造で使用される露光装置して縮小投影露光装置(ステッパ)が採用されるケースが出てきた。後工程用ステッパではキヤノンがi線を光源とする装置を提供している。キヤノンの主力装置は「FPA-5520iV」。新規開発した搬送系による基板の反り抑制、厚膜レジストに対応するの光源照度の改良により生産性を向上させている。

(2)オーク製作所

 配線パターン形成用の露光装置としては、ステッパとDI装置がある。オーク製作所はステッパで実績を残している。同社製品では光源としてghi線 gh線, i線をレシピに連動して自動切り替えできるブロードバンド露光に対応、可変NA機能 (0.16と0.1の可変)搭載した「PPS8200/8300」を販売している。

(3)アドテックエンジニアリング

 ウシオ電機の子会社としてDI装置「Inprex」を製造販売している。同装置は高品位・高出力のレーザーヘッドを基板幅でライン配置することにより、ワンタイムスキャンも実現。ヘッド間でのつなぎやズレのない露光を可能にしている。大型基板への対応も可能である。

(4)イスラエルOrbotech

 同社は米KLA社の子会社。FOWLPを含むFC-BGA/FC-CSPやBGA/CSP基板向装置の主力製品は「Palagon Ultra 300」。

はDI装置製品を提供している。

6)成膜装置

(1)英SPST Technology

 Cu配線のシード層形成にはスパッタリング装置が使用される。同社の(国内はSPPテクノロジーズが販売)の装置は、TSMCのほか、e-WLBタイプの製造にも採用されているため、FOWLP用スパッタリング装置市場でのシェアは50%を上回っているものと見込まれる。主力装置は300mmウェーハ対応「Sigma fxp PVD」。

(2)アルバック

 同社は後工程用スパッタリング装置としてマルチチャンバ型「SRHシリーズ」を販売している。200mmウェーハまで対応している。

(3)キヤノンアネルバ

 同社は高密度実装向け装置としてインラインタイプの「EL3400」を販売している。同装置は300mm径までのウェーハに加えて、大型パネルにも対応している。

(4)荏原製作所

 バンプ形成など後工程装置で実績のある荏原製作所は、バンプ形成、配線形成用装置「UFP600AS」で出荷実績を残している。

(5)米Applied Materials(AMAT)

 AMATはスパッタリング装置、めっき装置を製品化している。
 めっき装置の主力は「Nokota ECD」。枚葉処理型で複数のポッドを搭載することで、高いプロセス品質と生産性を両立させている。

(6)米Lam Research

 同社は前工程用で実績のあるめっき装置「SABREシリーズ」の応用として先端パッケージ向けに「SABRE 3Dシリーズ」を発売している。

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