半導体製造装置向けウェーハハンドリングロボット

ウェーハハンドリングロボットの市場動向

 ウェーハハンドリングロボットには、運ばれてきたウェーハを装置内に取り込み、プロセスチャンバや処理ユニットまで運ぶ大気ロボットとCVD、エッチング装置、スパッタリング装置、イオン注入装置などのプロセスで真空環境で使用される真空ロボットがある。
 ロボット自体は成熟したシステムであり、大きな技術革新はない。しかし、ロボットの搬送速度は、装置の処理能力に影響する。また、ウェーハの薄型化に伴い、より精密なハンドリングが必要となる。精密なプロセスに対応するため、一層のパーティクル、コンタミネーションの低減が要求されている。さらに電力消費を抑えるための省エネ化も求められている。このような課題に対応するため、モータ、ウェーハグリップ用ハンドなどを含めて、細部にわたって改良が進められている。
 大気ロボットと真空ロボットを合計したウェーハ搬送ロボット市場は、2020年以降半導体製造装置市場の伸びに対応して順調に拡大、2022年には1,413億円に達している。しかし、2023年に入って大手製造装置メーカ向けの受注が低下、売上高も低下(前年比9%減)する見通しである。特に後述する大手ベンダーの売上減が影響している。
 2023年後半から半導体の在庫調整も改善が見られるようになっており、2024年には半導体企業の設備投資回復、それに伴う半導体製造装置需要の改善が予想される。これに伴いロボット需要の拡大が期待でき、同年は前年比16.3%増の1,494億円にまで拡大する。



 ウェーハ搬送ロボットには多くの企業が参入している。主要企業のシェアを図2に示す。
 川崎重工業、安川電機、米Brooks Istruments社という3社が10%以上のシェア獲得しており、上位3社で69%のシェアを占めている。川崎重工業は製造装置、EFEMなどに向けての大気ロボットが主力。Brooks Instrumentsは欧米の大手製造装置メーカ向けを中心に真空ロボット分野でトップ企業となっている。安川電機は大気ロボット、真空ロボットのいずれでも2番手となっている。
 4位以降は、JEL、ダイヘン、平田機工、ローツェ、タツモ、ニデックインスツルメンツという日本メーカが続いている。


ウェーハ搬送ロボット:主要企業の動向

1.川崎重工業

 ウェーハの装置内への取り込みなどに使用される大気ロボットで実績を残し、大気ロボット市場ではトップの実績を残している。主力装置は「NTJシリーズ」。さらにテレスコピック機構を搭載、上下動の幅を大きくし、高位置、低位置でのハンドリングに対応した「TTJシリーズ」、ロングアームにより走行装置無しで4FOUPに対応可能な「NTH20」などを提供している。


2.安川電機

 真空ロボット、大気ロボットを提供しているが大気ロボットが事業の中心。2023年度は半導体製造装置の市場低下に伴い売上を落としたが、2024年以降回復を見込んでいる。
 主力製品は新型コントローラを搭載した新型大気ロボット「SEMISTAR-MU124D」(5軸水平多間接型)、真空ロボットでは高速、低コンタミ搬送を実現した「SEMISTAR-GEKKO VD31HDA」(4軸水平多関節型)を発表している。


3.Brooks Automation

 同社の真空ロボット「MAGNATRAN」シリーズは米Applied Materials(AMAT)、米Lam Research社などの大手半導体製造装置メーカで採用されている。MAGNATRANシリーズとしては3万台以上の出荷実績を残している。


4.JEL

 真空ロボット、大気ロボットを製品化している。大気ロボットが主力となっている。
 主力製品は、大気ロボットではEFEMなどで使用される「GCR4280」、製造装置内で使用される「GTCR5280」などが主力。真空ロボットは真空対応4軸円筒座標型「STVCR4190」などが中心となっている。従来型(STVHR)に比べ、可搬質量が2倍するとともに、高速、高精度搬送を実現している。製造拠点は佐波工場(広島県福山市)、JEL高知。JEL高知では2023年9月に新製造棟をオープン生産能力の強化を図っている。


5.ダイヘン

 大気ロボット、真空ロボットを製品化しているが、大気ロボットが中心となっている。2023年度のウェーハ搬送ロボット売上高は、ウェーハ製造分野での新規需要(大気ロボット)が期待できること前年度並みの売上高を見込んでいる。
 主力製品はACTRANシリーズ「UT-AFX/W 4000NM」。テープフレーム付きウェハ搬送、貼り合わせウェハ搬送、レチクル搬送などに対応するため搬送可能重量を4kgに拡大している。真空ロボットでは搬送速度を大幅に向上したACTRANシリーズ「UT-ADW3000HS」シリーズを発表している。
 2024年1月には、大気ロボットでは垂直多関節構造による搬送エリアの最小化した新製品の発表を計画している、真空ロボットでは高速・低振動・高精度搬送を可能にした新製品のリリースを予定している。


6.平田機工

 大気ロボット「AR-Wn180CL」シリーズ、真空ロボット「AR-Wn」シリーズを提供している。真空ロボットが中心で、日本の大手半導体製造装置メーカで採用されている。 ウェーハ搬送ロボットを中心とする半導体関連の2023年度業績は受注は減少しているが、受注済み案件の生産が進み売上高は対前年を上回る見通し(前年度比7.1%増)を示している。


7.ローツェ

 大気ロボット、真空ロボットを製品化している。大気ロボットが中心。主力製品は「RR756L15」。大気ロボットについてはロボット単体だけでなく、EFEMに組み込んでの販売も多いが、本項では、ロボット単体の売上高を示している。
 2023年2月期第3四半期以降、売上、受注とも低下していたが、2024年2月期第2四半期以降回復に向かっている。量産はベトナム工場で行っている。


8.タツモ

 EFEM向けに開発した大気ロボット「TT301Aシリーズ」が主力。低価格化を進め、自社装置だけでなく単体製品として他社への販売も行っている。このほかにもサーボモータ仕様で高速、高精度搬送を実現している「MTE」シリーズを製品化している。ウェーハ搬送ロボットなどの搬送機器はベトナムを製造拠点としており、増強を進めている。これにより生産能力が拡大、売上増につながっている。
 2023年12月期の搬送機器事業売上高は期初段階では前年度比4%増を予想していた。生産能力の拡大により、受注残の処理が進んだことから期初計画を上回る見通し。

9.ニデックインスツルメンツ

 同社は大気ロボット、真空ロボットを製造、提供している。大気ロボットが中心。同社はモータから自社開発を行っており、カスタマイズにも対応可能となっている。主力装置は「SR8240」、「SR8241」。
 FPD用ロボットでの実績を活かして、PLP用ガラス基板対応ロボットの開発を進めている。

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