半導体用語集

塩化物気相成長法(クロライドVPE)

英語表記:chloride Vapor Phase Epitaxy

 原料としてハライド系分子を用いる結晶成長法の一種で、塩化物気相成長法では原料ガス塩化物分子を用いる。原料として塩化物を用いる大きな理由に、高純度な塩化物原料が容易にえられるために成長結晶の純度を上げることができるという点があげられる(たとえば、ヒ素原料であるAsCl3は、不純物濃度0.1ppm程度のものが入手できる)。
 代表的な塩化物気相成長法として、AsCl3と金属Gaを用いたGa/AsCl3/H2系GaAsエピタキシーがある。通常水素は気相成長法で原料分子を輸送するキャリアガスとして用いられるが、この場合以下にみるように、重要な反応分子としての役割をも果たす。具体的な成長では、石英反応管(開管)の高温側に金属Gaを、低温側に基板結晶を置き、AsCl3を含んだ水素ガスを金属Ga側から流す。この時Ga側と基板結晶側で以下のような反応が起こり(不均等価反応)、GaAs結晶が成長する。
〔反応管上流部)
  4AsCl3(g)+3H2(g)→As4(g)+12HCl(g)
〔金属Ga部) .
  4Ga(1)+As4(g)→GaAs(s)
  4GaAs(g)+4HCl(g)→4GaCl(g)+As4+2H2
〔基板部〕
  4GaCl(g)+As4(g)→4GaAs(s)
 反応管内に入るとAsCl3が還元され、As4が生じGa溶液に溶け込む。 Ga溶液表面にはGaAsの表皮 (crust)ができ、このGaAs表皮と HClとの反応から、GaClがAs4とともに基板側に輸送される。基板部では、GaClとAs4との反応により GaAs結晶が析出する。これと同時に基板部に存在するHClが成長結晶と反応し結晶を分解するために、成長速度は、基板部におけるGaCl, As4, HCl濃度に大きく依存する。これを利用して、成長前の基板表面の清浄化を目的として、基板を高温にしエッチングすることができる。
 塩化物エピタキシーでは、反応管に石英を用いるが、アルミニウムと石英との激しい反応のため、アルミニウムを含むエピタキシャル成長には通常用いられない。
また多層膜の成長は、反応ガスの切り換えや複数個設けられた反応管間を基板移動させて行うが、常圧での成長のために、ナノオーダの急峻なエピタキシャル膜間界面の成長には必ずしも適していない。


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