半導体用語集

ケミカルビームエピタキシー

英語表記:chemical beam epitaxy

 ガスソースMBEの一種で、特に有機金属ガスを原料として用いるエピタキシーである有機金属MBE(metalorganic MBE)も含まれる。この方法は、実用的な半導体素子材料製造への応用を目指して発展してきた MBE技術と有機金属気相エピタキシー(MOCVD)技術とを結びつけた成長技術であるといえる。このため両者の特徴を活かした成長が可能である。通常のCVDでは、成長炉内の圧力は1Pa~10⁵Paの領域にあり、輸送過程を反応ガスが粘性流体(viscous­ fluid)であるとして扱うことができる。真空度が10⁻²Pa程度まで下がってくると、輸送過程は分子ビームとして扱うことが必要になる。ケミカルビームエピタキシーは、この領域での成長技術である。ケミカルビームエピタキシーでは、蒸気圧の低い金属原料を高温で蒸発させる通常のMBEと異なり、蒸気圧の高い液体、固体を気化させて用いるために、室温付近の低い温度のセルにより原料を成長基板に供給する。単体原料が必要な場合には、加熱分解セル(クラッキングセル)を用いる。GaAsのケミカルビームエピタキシーでは、MOCVDで用いられたようなTMGaのような有機金属原料をそのまま成長基板上に供給するが、ヒ素原料であるAsH₃は分解温度が高いために、通常はクラッキングセルによりAs₂などに分解して基板に供給する。
 通常のMBEにくらべて、(1)原料の補充が容易である、(2)マスフローコントローラなどにより供給原料の精密制御が可能である、(3)2種類以上のガスを正確に混合できるために、組成の制御が容易である、(4)成長結晶表面にオーバル欠陥が発生しない、などの長所を持っている。また MOCVDにくらべて、(1)ガスの流れに起因する複雑な成長速度などの制御が必要ない、(2)組成や不純物濃度の急峻な変化が容易に可能である、(3)RHEEDなどのその場観察が可能である、などの長所を持っている。しかしながらケミカルビームエピタキシーは MBEとMOCVDの融合である、という点から成長システムが大きくなり、設備予算、装置維持コスト、安全などの問題が短所としてあげられる。


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