半導体用語集

光ソリトン

英語表記:optical soliton

 光ファイバの分散特性と自己位相変調効果がつり合うことにより安定に伝搬する光パルス。なお、ソリトンとは粒子のように振る舞う孤立波であり、その性質を変えることなく伝搬し、衝突しても性質を失うことがない局在した波である。
 分散が0でない光ファイバ中を光パルスが伝搬する場合は、光パルスを構成する周波数成分ごとに伝搬速度が異なるため、その時間幅は伝搬するにつれて広がる。石英系光ファイバでは、0分散波長よりも長波長側では周波数が高い光ほど速く進み(異常分散)、短波長側では周波数が低い光ほど速く進む(正常分散)。また、材料である溶融石英は正の三次非線形感受率を持っており、光強度に比例した位相変化が与えられる(自己位相変調)。光パルスのように強度が時間的に変化する場合は、自己位相変調のためにパルス波形に応じて位相が変化し、光強度が増大するパルスの立ち上がり部分では周波数が低く、立ち下がり部分で高くなる。この自己位相変調による周波数変位は、異常分散領域ではパルスを圧縮させる方向に働くため、分散によってパルス波形が広がろうとする作用を相殺する。このため、パワーや分散値などの条件をうまく選べばパルスは広がることなく安定に長距離を伝搬できる。
 光ファイバ中の非線形伝搬は非線形シュレーディンガ方程式で記述することができ、光ソリトンはその特解でパルス形状はN²P₀ sech²(T/T₀)で表わされる。特に、N=1の場合を基本ソリトンといい、伝搬に伴う波形変化はない。ただし、Tは時間、T₀はパルス幅、P₀=|β₂|/(γT₀²) は基本ソリトンのピークパワーであり、β₂は光ファイバの分散値でγは非線形係数である。Nが1以上の整数の場合は、パルス圧縮・伸長を周期的に繰り返しながら伝搬する。
 光ソリトンを用いた光ファイバ通信を光ソリトン伝送と呼ぶ。光パルス光源から発生した光ソリトンパルスに強度変調し、伝送させる。パルス光源としては、ファイバ・半導体モード同期レーザ、利得スイッチ半導体レーザ、CW光源と外部変調器を組み合わせたものがよく用いられる。長距離の伝送路では光ファイバの損失により非線形性が失われるが、この損失を補償するために分布光増幅器または周期的に配置された光増幅器が用いられる。
 また、N ≫1の高次ソリトンやファイバのパラメータを長手方向に変化させた特殊なファイバを用いてパルスの時間幅を圧縮させることができる。時間幅がピコ秒以下の超短光パルスをえる有力な手法である。


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