半導体用語集
蛍光励起分光
英語表記：fluorescence excited spectroscopy
波長可変レーザや白色光を用いて、励起エネルギーを変化させながら発光強度を測定する分光法を蛍光励起分光もしくはフォトルミネッセンス励起分光と呼ぶ。励起エネルギーを発光エネルギーのそばまで変化させなければならないので、迷光除去能力の高いダブル分光器を用いる。励起光源としては波長可変光源であることが必須であるが、白色光を分光器に通すことで所望のエネルギーを切り出し、これを励起光源として用いることも可能である。
半導体量子構造の吸収測定を行うた めには、不透明基板の影響が大きいため、基板をエッチングなどにより取り除かなければならない。これは時として困難な作業である。緩和過程においてフォノン緩和が支配的であり、非輻射再結合が無視できるような構造においては吸収スペクトルとして蛍光励起分光を代用することが可能である。また、一般的に半導体中に吸収されたキャリアは発光する際に格子にエネルギーを与えるため、吸収のエネルギー端は発光のエネルギーよりも高い。このエネルギー差はストークスシフトと呼ばれ、量子構造の品質を評価する際の目安となる。蛍光励起分光ではこのストークスシフトを正確に見積ることが可能であるので、量子構造の品質を評価する手段として用いられる。非輻射再結合を含む構造に対して蛍光励起分光を用いる場合は、えられる信号強度に緩和確率が含まれていることに注意する必要がある。
蛍光励起分光の別の利点は、大きな不均ー広がりを含む構造に対し、均一広がりを選択することが可能な点である。大きさや組成によってピークのばらつきを持つ構造では、個々のピークが重なり合うため、それらのエネルギー準位を同定することは不可能である。これに対し、蛍光励起分光では、発光エネルギーを選択できるため、同ーの発光エネルギーを持つピークを選び出すことが可能となる。量子ナノ構造における蛍光励起分光は、空間的に構造を制限するのではなく、エネルギー的に少数構造を選択することを可能にする。
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