半導体用語集

イオンインプランテーション

英語表記:ion implantation

半導体の伝導性を制御するために必要な物質(原子または分子)をイオン化し、静電的に加速して半導体中に注入することをいう。i/iと略し、イオン注入、またはイオン打ち込みともいう。注入エネルギーは通常数keVから数MeVである。熱平衡状態で行う熱拡散法にくらべると、非熱平衡状態で行う物理的不純物ドーピング法である。
1970年代初期に、MOSFETのしきい値電圧制御のためのチャネルドープ用として工業化されて以来、量産性および制御性に優れたイオン注入装置が開発され、
 (1)不純物イオンの注入量と注入深さを正確にコントロールできる。
 (2)熱拡散法にくらべて低濃度ドーピン  グが可能である。
 (3)浅い接合の形成が可能である。
 (4) Si02以外にフォトレジストや金属膜などをマスク材料として使用でき、工程の簡略化が可能である。
 (5)薄い絶縁膜を通して不純物を注入できる。
 (6)横方向へのイオンの広がりが比較的小さく、セルファライン効果がある。                
 (7)面内均一性が優れている。
などの特徴があるため、集積回路デバイスで必要とされるほとんどの不純物ドーピングがイオン注入で行われるようになった。近年開発の進んでいる超LSI技術においては、パターンの一層 の微細化に伴い、不純物ドーピングの高精度化、浅い接合形成、レジストマスクによる位置精度の向上、高精度の自己整合性などの要求から、イオン注入はますます重要な要素技術となっている。しかしながら、
 (8)エネルギー粒子の衝突により結品内に損傷が発生する。
ため、半導体へのドーピング技術としては、イオン注入後、結晶欠陥の回復と注入イオンの電気的活性化のために高温の熱処理を行う必要があり、これをアニーリング(Annealing;熱処理)と呼ぶ。一方、
 (9)非熱平衡状態で行うため、不純物の拡散係数や固溶度に左右され難い。
という特徴を利用して、現在では半導体以外の金属、セラミックス、高分子材料への応用が盛んに試みられている。
イオン注入において重要なパラメータは、基板の種類(たとえば、 Siや GaAsなど) 、イオン種(たとえば、As+やB+など)、注入エネルギー(通常は数10keV~数100keV)、および注入量(dose)(ions/㎠)である。


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