半導体用語集

ダブルヘテロ接合

英語表記:double hetero junction

 化合物半導体をバンドギャップエネルギーの異なる別の半導体で挟んだ接合構造。半導体層の両側にヘテロ接合が形成されるのでこの名称で呼ばれる。ヘテロ接合部には電子親和力の差によりエネルギー障壁が形成されるため、バンドギャップエネルギーが同一の結晶のみで構成されたホモ接合や、ヘテロ接合が片側のみに形成されたシングルヘテロ接合とくらべて、優れたキャリアの閉じ込め効果を示す。特に発光デバイスにおいては、活性層と呼ばれるバンドギャップエネルギーの小さな発光層の両側に、クラッド層と呼ばれるバンドギャップエネルギーの大きなp型およびn型の半導体層を接合することにより、電子と正孔双方の活性層への注入効率を飛躍的に改善して高い反転分布密度をえることが可能となり、1970年の半導体レーザの室温連続動作実現に大きく貢献した。また、通常はバンドギャップエネルギーの小さな活性層の屈折率がクラッド層にくらべて高くなるため、ダブルヘテロ構造がスラブ光導波路として機能し、誘導放出光を活性層内に閉じ込めて導波させることも可能となる。発光波長0.8µm付近の近赤外領域においては、GaAs基板上のAlGaAs / GaAs / AlGaAs構造が、また光ファイバの低損失帯である波長1.3~1.55µm帯では、InP基板上に形成したInGaAsP / InGaAsP / InGaAsP構造(混晶の組成比が異なる)が広く用いられている。また、ヘテロ接合に生じる二次元電子ガスをチャネルに利用した、電界効果型トランジスタ(一般にHEMTと呼ばれている)においても、電子親和力の大きな高純度半導体層(通常GaAs)の両側をバンドギャップエネルギーの大きなn型半導体層(通常AlGaAs)で挟んでダブルヘテロ接合を形成することにより、高濃度の二次元電子ガスを閉じ込めた素子が提案されている。なおダブルヘテロ接合の形成には、通常エピタキシャル成長が用いられるが、ヘテロ接合を形成する半導体結晶の格子定数が大きくずれると界面において応力による結晶欠陥が生じる。したがって超格子構造などで結晶歪を意図的に導入する場合を除いて、一般には欠陥を抑制するために、各層の格子定数を十分に一致させることが必要である。

関連製品

「ダブルヘテロ接合」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「ダブルヘテロ接合」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。