半導体用語集

ホットエレクトロン(熱い電子)

英語表記:hot electron

 半導体に強い電界が印加された時に生じる熱非平衡な分布を持った電子系の総称。一般に,半導体に強い外部電界が印加されると,電子系は電界により加速され,エネルギーの高い状態になるが,そのエネルギーの増加の割合が電子とフォノンとの衝突によるエネルギー損失割合とつり合うところで定常状態に達する。この時,電子系の分布関数の重心は,波数空間上で原点よりシフトするとともに,フェルミ面付近の分布関数はぼけた状態となる。この電子分布関数のぼけを「温度」として記述した時の特性温度(「電子温度」と呼ばれる)は,格子系の温度よりも高くなる。このため「ホットエレクトロン(熱い電子)」と呼ばれる。「ホットエレクトロン」状態が顕著となる電界強度は電子の移動度に依存するが,液体へリウム温度程度の極低温領域では電子1個当たりの入力パワーPe(=eμE²)が10⁻¹⁶W程度になると電子温度が上昇し始める。この時の主なエネルギーの緩和機構は音響フォノンの放出であり,電子系への入力電気パワーと音響フォノンの放出によるエネルギーの損失がつり合うところで,電子温度は定まる。さらに入力パワーが増加すると,電子は光学フォノンを吐くことができるほど高エネルギーに分布し始め,Pe=10⁻¹³W程度以上では主なエネルギーの緩和機構は光学フォノンの放出となる。
 最近では,広義に,ヘテロ界面におけるバンド不連続などの急崚なポテンシャル差を持った構造や,トンネル構造から打ち出される高い運動エネルギーを持った電子についても「ホットエレクトロン」と呼ばれている。


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