半導体用語集

光近接場分光

英語表記:optical near field spectroscopy

 半導体量子構造の光学応答を高空間分解能で検出する手段の一つとして近接場分光がある。光を微小領域に照射する時、レンズなどの光学素子を用いると、光の波動性のために回折限界以下に絞ることはできない。ところがこの回折限界そのものは光の大きさを決める本質的な制限ではない。たとえば発光現象は原子もしくは電子の領域で発生する過程であることからも明らかである。
 回折限界を避けるために、光を遮蔽する物質に微小開口を設け、この開口を試料表面に接近させて、光の回折が起こる前に照射もしくは検出を行うことにより、試料の光学特性を高空間分解能で観測することが可能となる。この方法を光近接場分光と呼ぶ。本来、この技術は生体試料や単一分子分光などに用いられてきたが、近年、半導体量子ナノ構造の評価および物性探索を目的として半導体の分野でも広く用いられるようになった。この技術は光の遮蔽および表面への接近が重要要素となる。現在、一般的に用いられているのが、先鋭化したファイバに金属を蒸着し、その先端に微小開口を設けたファイバプローブである。ファイバプローブを用いて二次元空間上をイメージングする方法を走査型近接場光学顕微鏡と呼ぶ。この方法の利点は表面の加工が不用であること、イメージングが可能であることなどがあげられる。一方、欠点としては先鋭化ファイバ部での光損失が大きいことがあげられる。したがって、半導体の分光の場合は特に、検出効率で空間分解能が制限されることが多い。集光効率を上げるため、やや大き目の開口を用いることにより、半導体のルミネッセンス分光の場合は100nm以上の分解能で測定されるのが普通である。
 ファイバプローブを用いた方法の他に、試料表面に金属を蒸着して電子ビーム描画法などにより微小開口を作成し、顕微分光と組み合わせた方法も、原理的には同一であるので、光近接場分光と呼ばれる。この場合は光の損失がファイバプローブを用いる時にくらべて小さい。しかしながらイメージングは不可能である。この金属マスクを利用した方法の最も重要な利点は、同ー場所を何度も測定することが可能な点である。

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