半導体用語集

公正市場価格

英語表記:Foreign Market Value : FMV

 一般には、Fair Market Value(公正市場価格)とされているが、正式には、Foreign Market
Value。日米半導体協定は、1985年の日本製半導体に対するダンピング提訴と、SIAによる米国通商法301条に基づく提訴を契機に1986年9月に結ばれたが、この骨子は、(1) FMV(公正市場価格)設定と、そのモニタリング、(2) 日本市場での外国製半導体のシェア拡大からなる。このうち、前者のFMVは、コストの適正利潤の8%を加えた価格であり、コストを四半期ごとに計算し、主要メーカーは米国商務省に生産コストデータを提出することを義務づけられている。なお、このFMVの対象は、DRAMとEPROMだけであり、SRAM、フラッシュなどは含まれていない。しかし、現実には、このダンピング防止を目的として導入されたFMV制度は、その後の1M DRAMの需給逼迫が約2年間続いたことから、有名無実化した。そして、FMV制度によって、1M時代には、以下のことが起こった。第一に、FMVで計算されるコストは、3~6ヶ月前のコストを基に算出されるため、量産化が急速に進む中で、現実のコストは、FMVを大幅に下回ることになり、先行メーカーは高収益をあげられる。第二には、他社に先んじて、量産に成功したメーカーが最も安いFMVを確保するため、量産化に先行することが最重要戦略となった。第三に、結果として、1M DRAM時代には価格の下支え効果を生み、各社に莫大な利益をもたらした。その一方で、限界メーカーの淘汰は遅れ、潜在的供給過剰体制を生んだ。さらに、これは、需要がすでに立ち上がった1M時代は良かったが、これから需要が離陸しようとする4M時代においては、日本メーカーは、FMVが足枷になって、需要促進のための思い切った値づけができず、FMVの適用外の韓国メーカーは価格戦略でシェアを伸ばすことになる(なお、この後、韓国メーカーも、米国にダンピングで訴えられることになる)。その意味では、
FMVは、ダンピング阻止という意味より、日本メーカーのシェア低下に効果があったといえよう。

関連製品

「公正市場価格」に関連する製品が存在しません。

関連用語

関連特集

「公正市場価格」に関連する用語が存在しません。




「公正市場価格」に関連する特集が存在しません。




会員登録すると会員限定の特集コンテンツにもアクセスできます。