半導体用語集
台湾の成長
英語表記:growth of Taiwan
台湾エレクトロニクス業界の発展の概略は以下のようである。最初は蒋介石の強力なリーダーシップの下に、特に中国大陸からの脅威を意識して防衛上の意味合いが大きく、重工業とエレクトロニクス産業を中心に振興したことが始まりである。その後は、科学技術出身のテクノクラートのリーダーシップによって輸出志向の工業化が進められた。半導体に関しては、1960年代に外資系企業中心に後工程への進出が進んだ。しかし、ハイテク化が本格的に進められるのは、1970年代に入ってからである。1974年のERSO(工業技術院電子工業研究所)の設立、1977年RCAからの技術導入のインパクトが大きかった。特に、1970年代末に新竹工業団地ができると、米国への頭脳流出組の帰国が始まり、ハイテクベンチャーの設立が促進された。1980年以降は、UMC、TSMC、TIエイサーなど、現在の台湾半導体業界の中核となる企業が誕生している。先端半導体への本格的設備投資が始まったのは1989年からである。そして1990年には、世界のトップ水準に追随すべくサブミクロン製造技術開発プロジェクトが始まったのである。ただ、この時点では、半導体産業はデザイン、パッケージが多く、前工程の半導体の生産は少ない。台湾国内の半導体需要の80%を海外、特に日、米、韓国に50%を依存しており、自給比率は20%に過ぎなかった。製品の品種別では、ファウンドリが多く、韓国にくらベ、それほどメモリに偏っているわけではなく、比較的バランスがとれているといえよう。企業別では、政府系の TSMCと、老舗のUMCがトップ級であり、これにWinbondなどが続く。DRAMメーカーは、1995年までは、TIエイサー(現エイサーセミコン)だけといっていいい状態であったが、その後、日本のアウトソーシングを担うPCSなどが誕生し、その比率を高めている。興味深いのは、台湾の半導体企業の技術戦略である。まず、経営の優先度が、日本では伝統的に、シェア、成長性、収益性の順であるのに対し、台湾では、収益性、成長性、シェアの順である。よって、短期的な収益性が期待できないような事業は、成長を持続することも困難であると考えられている。1MDRAM時代のように、先行投資でシェアを上げ、短期的には赤字でも中期的あるいはシリコンサイクルの間に高収益性と成長力を達成しようという戦略は不可能である。台湾では、このため償却も5年定額償却であり、1イヤールールの会計基準に則した戦略である。このため、日本の場合テクノロジードライバが DRAM中心であるのに対し、台湾は「分工合作」という言葉に象徴されるように、各社がおのおののテクノロジードライバを持ち、お互いに融通し合い、分業体制をとるのである。日本が競争による発展形態であるのに対し、台湾は協調による発展形態を目指しているといえよう。この台湾モデルは、潜在的成長性が低下する中で、今後日本のハイテク企業がモデルとすべき一つの方向性を示唆しているといえる。台湾の技術力の背景は、新竹科学技術工業団地に象徴される、ハード、ソフト両面のインフラの整備、いくつかの助成措置、「頭脳流出」科学技術者の Uターン促進にある。米国に数10万人、IBMの研究開発陣の1/3を占めるという「頭脳流出組」を積極的にUターンさせ、インフラの整った新竹科学技術工業団地で自由に研究開発させる。またあるいはベンチャービジネスを創業させ、それを資金的に積極的に支援するという体制が1980年代後半に確立されたのである。事実、海外留学組の帰国率も1989年には200人程度であったのが、1993年には1,000人になり、すでに累計の帰国率は30%にまで高まっている。台湾の「シリコンバレー」と呼ばれる新竹科学技術工業団地は、台北の南西70kmに位置し、約2,000万m2の広大な敷地に、約2万5,000人の人々、100社を超えるハイテク企業が集まっている。このうち半数は留学経験者によって創業されたハイテクベンチャーである。すでに巨額の設備投下がなされ、半導体を製造するうえで必要な電力、水、酸素、窒素などはパイプを通じて供給される。こうしたハード的なインフラだけではなく、ERSOからの技術移転や、各種の免税、助成制度がある。半導体などハイテク産業に対する政府の恩典は、①ハイテク企業設立後5年間の無税措置、②戦略的投資のための負債に関して低金利融資、③ハイテク企業の投資家に対し、30%の信用貸し、④ノウハウの輸入などの支払いについての免税措置、⑤投資滅税(製造装置購入5~15%、訓練コスト5%、研究開発15%)、⑥輸入される装置と材料は関税免除、などであり、日米はもちろん、韓国以上のハイテク優遇政策がとられている。特に、日韓がベンチャーよりは、大手企業中心に優遇されているのに対し、まさにハイテクベンチャーを育成しようという点が台湾の特徴であるといえる。この新竹科学技術工業団地は、大学、国立研究所、企業研究所、ベンチャーだけでなく、一部に開発の試作のための情報・技術の集積地であり、試作品の市場ともいえる「秋葉原」と、試作に必要なマイコンブレッドボードやメカ部分の金型などの技術集積地である「川崎、大田区」と同様の技術の集積構造を兼ね備えている。
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