半導体用語集

垂直ブリッジマン法(VB法)

英語表記:Vertical Bridgman method (VB method)

 垂直ブリッジマン法はいわゆるブリッジマン法の原形であり、この方法とよく似たタンマン法と同年の1925年にBridgmanにより始められた。この方法は、図1に模式的に示すように、るつぼに収容した原料を垂直方向に温度勾配のある炉内に設置して原料を融解した後、徐々にるつぼを下方(低温部)に移動させることにより、るつぼ下方から融液を固化させる(垂直)一方向凝固成長法である。この方法では、るつぼ底部の形状を細めるなどの工夫により1個の成長核から成長させたり種子結晶を用いることにより、単結晶をえることができる。この方法は装置構成が簡単であるため古くから金属の単結晶作成に用いられてきた。後に、成長結晶の熱歪を減らした高品質光学アルカリハライド結晶の成長のために、融点近傍のみに急峻な温度勾配をつける方法がStockbargerにより提案され、以降この温度分布が主流となったため、ブリッジマンーストックバーガー法とも呼ばれている。
ブリッジマン法、タンマン法はともに融液からのるつぼ内での一方向凝固成長法であるが、前者は成長の駆動力(過飽和)をるつぼの低温部への移動によって与えており、後者は炉内温度を低下させることにより与えている。工業用大型化合物半導体結晶の主な成長法の一つであるVGF法も融液からの一方向凝固成長法であるが、これについてはるつぼを移動させないという点で似ている「タンマン法」の項で解説している。
 垂直ブリッジマン法により化合物半導体の合成や単結晶成長を行う場合には、揮発成分の融液からの離散を防がなければならない。この手法として従来、高圧の不活性ガスを用いる方法と蒸発成分の蒸気圧を加える方法が取られてきた。近年、高純度の液体封止剤B2O3(500~600℃で軟化するガラス状物質)を用いる方法が考案され、液体封止垂直ブリッジマン法(LE‐VB法)と呼ばれている(これについては別項で説明する)。
 高圧不活性ガスを用いる方法は高圧ガスが揮発成分の実効的蒸気圧を滅少させる効果を利用している。たとえば、ZnSは融点(1,830℃)において常圧ではZnとS2に解離するため融液を作ることができないが、不活性ガス圧を3.3 atm以上に加圧すると解離が抑制され融液を作ることができる。解離による原料の損失は圧力が高いほど少なくなる。そこで、蓋つきの高純度炭素製るつぼに収容されたZnS粉末をアルゴンガス圧50atmの雰囲気で融液にすることにより、直径1cm程度の単結晶がえられている。
 蒸発成分の蒸気圧を加える方法は、成長結晶の特性が融液の化学量論的組成からのずれの影響を受けやすく、かつ融液組成がずれ易い場合に用いられる。たとえば、ZnSeはともに昇華性の物質であるZnおよびSeから構成されるが、その融点(1,520℃、最小圧力0.53atm)ではZnの蒸気圧の方が高く(約0.5atm)、融液はSe過剰になりやすい。このような融液から成長したZnSe結晶は過剰Seに起因する欠陥を多く含むことになる。そこで、通常の2ゾーン垂直ブリッジマン炉の下部にもう一つZn加熱用の低温ゾーンを追加し、低温部の温度調節により融液の組成を調整する方法が取られている。
 垂直ブリッジマン法は、るつぼ内に結晶ができるため結品形状は自動的にるつぼ形状(通常は円形)になる、結晶内の温度勾配を小さくできたため転位をを減少させることができるという利点がある一方で、固液界面がるつぼと接触しているため双晶が発生しやすい、固液界面の観察が難しいため種子結晶と融液の接触が難しいなどの欠点がある。


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