半導体用語集
硫化カドミウム
英語表記:CdS
結晶構造:主にウルツ鉱構造をとるが,GaAs(001)面上では閃亜鉛鉱構造をとる。格子定数:a=0.41368nm,c=0.67163nm(ウルツ鉱構造),0.5832nm(閃亜鉛鉱構造)。バンド構造:直接遷移型。エネルギーギャップ:2.58eV(4.2K),2.485eV(293K)(ウルツ鉱構造),2.53eV(LT)(閃亜鉛鉱構造)。有効質量:伝導帯mc*/m₀=0.23,重正孔帯mhh*/m₀=0.7(⊥c軸),~5(//c軸)(ウルツ鉱構造),伝導帯mc*/m₀=0.14(閃亜鉛鉱構造)。比誘電率:ε(0)=10.33(//c),9.35(⊥c),ε∞=5.24(5.86)。励起子束縛エネルギー:30.2meV(A),30.8meV(B)。フォノンエネルギー:LO=37.7,37.4meV,TO=29.7,28.2meV。弾性定数(×10¹¹dyne/cm²):c₁₁=9.07,c₁₂=5.81,c₄₄=1.504。熱伝導率:0.3W/cm・K。熱膨張係数(×10⁻⁶/K):5.0(⊥c),3.5(//c)(RT)。融点:1,405℃。
ガラスマトリックス中にCdS微粒子を形成したり,コロイド溶液中にCdS/ZnS微粒子を作製する研究が進められ,比較的サイズのそろった微粒子の形成が可能である。これらにおいては重正孔,軽正孔による励起子吸収も観測され,粒子サイズによる量子サイズ効果が顕著に観測される。このため,粒子サイズによって異なった色に着色してみえる。CdS/ZnSはtype-Ⅰのヘテロ接合であるが,CdS/ZnSeでは,ZnSeよりCdSの方がエネルギーギャップは小さいが,Sの電気陰性度が大きいためCdSの価電子帯がエネルギー的に下がり,CdS/ZnSeはtype-Ⅱのヘテロ接合となる。CdSはn型の伝導性を示す光伝導感度の高い光検出器となる。
CdS微結晶中に入れたClが伝導帯から0.03eV位の浅いドナー準位を形成し,電子伝導性を増す。一方,同時にドープしたCuがCd格子位置に入って価電子帯から~1eVのエネルギー位置にアクセプタ準位を形成する。これが正孔の捕獲中心として働き,電子の寿命を長くして光伝導感度の増感中心として働く。これにより数1,000の電流利得がえられ,応答速度が問題とならない領域,たとえばカード読み取り器,カメラの自動露出機構,フォトカプラなどに広く利用されている。
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