半導体用語集
量子井戸サブバンド間遷移
英語表記:quantum well inter-subband transition
量子井戸構造に閉じ込められた電子は、井戸の厚さ方向に運動の自由度を失い、この方向のエネルギーは量子化されサブバンドが形成される。各サブバンドの電子は、井戸内で二次元の運動自由度を持つため、エネルギー値はk²に比例し、その状態密度はエネルギーによらず一定になる。このようにして量子井戸中に形成されたサブバンド間の遷移が、量子井戸サプバンド間遷移である。GaAs、InGaAsなどの量子井戸構造では、サブバンド間のエネルギー差は小さく赤外の領域になる。この遷移によりサブバンド間の光吸収が可能になるが、サブバンド間工ネルギーは、井戸幅などにより任意に制御できることから、任意の波長に対する赤外線検出器を作製できる可能性がある。さらに、最近ではこのサブバンド間遷移をレーザに応用する試みが成功を納めている。サブバンド間遷移を利用したレーザは、(1)曲率(有効質量)のほぼ等しいバンド間の遷移であるため、バンド上のすべての電子が同じ遷移エネルギーで遷移し利得が大きくなる。(2)無注入状態では上のサブバンドのみならず、下のサブバンドも空になるので、レーザ発振の邪魔をする吸収がなく小さな反転分布で発振する、などの特徴を有する。このため共鳴トンネル現象を利用して、上のサブバンドに効率的に電子を蓄積し、下のサブバンドから効率的に電子を引き抜くことにより、LOフォノンによる非発光遷移確率が大きくてもレーザ発振がえられている。このサブバンド間遷移のエネルギーは、GaAs系などの多くのⅢ-Ⅴ族量子井戸構造で赤外領域にあるが、InGaAs/AlAsSb系を用いれば1.5µm帯を実現でき、さらに GaN系に拡張すれば可視光領域も力バーできる。このサブバンド間遷移を利用したデバイスには、井戸幅のゆらぎの影響をどう減らすか、効率のよい共嗚トンネル注入をいかに実現するかなど、多くの問題がまだ残されているが、光検出器としてもレーザとしても大きな可能性が秘められている
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