半導体用語集

μ-PCD法

英語表記: μ-Photo Conductive Decay method

シリコンウェハの再結合ライフタイムの基本的な測定法である。パルスの半導体レーザ光をシリコンウェハに照射し、過剰キャリアの電子・正孔を注入する。レーザ光の波長は通常シリコンのバンドギャップより大きいエネルギーを持つ904 nmを用いる。これらのキャリアは再結合により減衰していくが、この時導電率も変化する。一方、ガンダイオード発振器から発振されたマイクロ波は導波管を通ってシリ コンウェハに入射される。表面で反射されたマイクロ波は、サーキュレータを通って検波器に入るが、この反射波のパワーはウェハの導電率変化を反映して時間的に減少する。この減衰曲線から再結合ライフタイムが求められる。マイクロ波の検波レベルと導電率の間に相関性の範囲が広いほど良い装置であるといえる。またこの時重要なことはウェハ表面での再結合を抑制することで、いくつかの方法が提案されている。酸化膜づけ法は高温で良質の酸化膜を形成し、Si/SiO2、界面の界面準位密度を少なくし、かつ表面の汚染金属をバルク中に拡散させる方法であるが、この時バルク中に酸素析出物が誘起されてはならない。重金属溶液を使用する電荷膜処理法は環境や装置に汚染をもたらす場合がある。ケミカルパッシベーション法はウェハをポリエチレンなどの袋に入れ、ヨウ素エタノール溶液やHCl溶液、NaOH溶液などを注いでパッシべーションする。この方法は簡便で有効である。ところが高濃度基板に成長したエピタキシャルウェハでは基板の抵抗率か 非常に低いため、マイクロ波の反射率がきわめて高く、S/Nが低下してエピ層内でのキャリアの再結合による反射パワーの変化をとらえることができない。また励起光の波長が長いため工ピ層内にキャリアを有効に生成できなかった。最近、差動μ-PCD法が開発され、エピウェハのライフタイム測定に威力を発揮している。励起光としては波長の短い523nmを用い、厚さ数μmのエピ層中に効率よく過剰キャリアを注入する。
一方、マイクロ波発振器から発振されたマイクロ波はマジックティで二方向の導波管に分岐され、ーつは信号用導波管に、他は参照用導波管に導かれる。信号用導波管からのマイクロ波は励起光レーザが照射されている領域に入射するので、反射マイクロ波の強度は過剰キャリアの生成による導電率の変化を反映して増加する。マジックティの出力は信号マイクロ波と励起光レーザが照射されていない領域からの参照マイクロ波の差になるため、ミキサ出力はウェハの導電率の変化を感度よく抽出することになる。差動μ-PCD法によりp/p+やp/p++エピウエハのライフタイム測定が可能になっている。


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