半導体用語集
はんだ接合部疲労解析
英語表記:fatigue simulation of solder joints
マザーボード上に表面実装された,はんだ接合部の疲労寿命を数値解析から評価すること。
半導体パッケージをプリント配線板に実装した製品では,使用環境で温度変化が起こると,両者の線膨張係数差に起因する歪が接続部に生じる。一般に金属材料は,非弾性歪が繰り返し与えられると疲労破壊する。非弾性歪振幅⊿εが与えられた時,疲労寿命Nfは材料によって異なる定数C,kを用いて式(1)のように表わされ,Manson-Coffin則という。
はんだ材料(Sn-Pb系はんだ)の機械的特性は,常温付近においても顕著な非線形性を示すことが知られている。変形の成分は,結晶粒内の破壊によるものと結晶粒間のすべりによるも
のに分けられる。歪速度が比較的大きい領域では前者により塑性を示すが,歪が比較的ゆっくりと増加する場合は主に後者が変形を支配し,一定荷重下で時間の経過とともに歪が増加する。これがクリープである。電子機器の使用環境におけるはんだの歪速度は比較的小さい領域と考えられるため,はんだの非線形的な変形を計算する方法として,弾クリープ解析(elastic-creep analysis)が提案されている。すなわち,はんだの全歪εのうち,線形成分を弾性歪εel,非線形成分をクリープεcrで表わす。
εelとεcrは,式(3),(4)で表わされる。ここで,σは応力,Eは縦弾性係数,A,nは温度によって変わる係数である。
近年,有限要素法を用いた数値計算によって非弾性歪を求め,接合部の疲労寿命を予測する手法が一般的になってきている。半導体パッケージを構成する各材料の寸法値や,線膨張係数,縦弾性係数などの物性値の最適解を効率的に見つけ出すことができる。
はんだ接合部疲労解析で求められる疲労寿命は,微小亀裂が発生するまでのサイクル数であり,電気的不良とは必ずしも一致しない。亀裂が発生してから,亀裂が進展し,抵抗上昇を引き起こすまでのサイクル数は余寿命と呼ばれる。余寿命は,はんだの接合面積はもちろん,温度サイクル時の半導体パッケージや実装基板の変形状態にも依存しており,正確な予測は困難である。現在,亀裂進展速度の測定と数値解析によって精度を向上させる研究が進められている。
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