半導体用語集

イオンエネルギー分析

英語表記:ion energy analysis

プラズマ中では、基板表面へのイオン衝撃によりスパッタや反応性イオンエッチングなどが生じるために、基板に入射するイオンのエネルギーを分析することが重要である。プラズマ中のイオンエネルギー(速度)を分析することを、イオンエネルギー分析という。イオンエネルギー分析用に磁気偏向型分析器、静電型エネルギー分析器、静電軌道偏向型分析器、飛行時間型分析器など多種多様の分析器が開発されている。磁界偏向型分析器は、静磁界によって人射イオンの軌道を曲げ、適当な場所に設置されたイオンコレクタでそれを検出する方式である。イオンは、磁界 (B) によってサイクロトロン半径で円軌道を描く。 サイクロトロン半径γは、
B-1=[2V(M/Ze)]1/2で表わされる。ここで、Ze/M(粒子電荷/質量)は、イオンの比電荷である。比電荷がわかっていれば、印加磁界の大きさを変化させることによって、イオンコレクタに信号のピークが出現する磁界の位を測定し、イオンエネルギー (V)を決定する。磁場偏向型分析器においては、イオンを加速して分析器内に入射させるため、空間電荷効果の影響が少なく、加速電圧によっては、比較的大きなイオン電流を取り出すことが可能である。
静電型エネルギー分析器は、減速電界と静電軌道偏向型がある。減速電界型は、グリッド状入射電極、グリッド状減速電極、イオン補集電極の電極が並列に設置してある。たとえば、正イ オンのエネルギーを測定する場合は、入射電極の電圧よりも減速電極の電圧を低く設定し、減速電極に印加する電圧を変化させる。減速電圧がイオンのエネルギーよりも大きい場合は、入射イオンは減速電極で反射される。減速電圧を増加させて補集電極の値が0になる値を求めれば、その値がイオンエネルギーとなる。静電軌道偏向型は、静電界を用いてイオンを偏向させることによりイオンエネルギーを測定する。 これは、磁界偏向型分析における磁界の代わりに静磁界によって入射イオンの軌道を曲げ、印加電圧を変化させることによってエネルギーを測定するものである。イオンの軌道の偏向には、平行平板型、セクタ型、円筒鏡面型、球面型の構造が用いられる。特に、円筒鏡面分析器(Cylindrical Mirror Analyzer: CMA) は、オージェ電子分光や光電子分光などの、表面分析装置における電子工ネルギー分析に多く用いられている。 飛行時間型分析器では、電圧Vで加速された質量m、電荷Zeのイオンが,定められた距離Lを走行するのに要する時間tはt=L(m/2ZeV)1/2 で表わされ、イオンの質量によって差が生じる。この時間差を利用して、イオン種やそのエネルギー分布を測定す る方法を飛行時間(time of flight)型質量分析器と呼ぶ。この方法では、全質量の領域にわたってスペクトルが非常に短時間でえられるため、高速現象の観測に適している。また、初速度によって飛行時間に差が生じるので、イオンのエネルギー分布を測定することができる。


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