半導体用語集

エッジチャネル

英語表記:edge channel

 磁場中での二次元電子ガスの運動を考えると、大部分の電子はローレンツ力によりサイクロトロン周回運動をする。一方、試料の端(エッジ)で端からサイクロトロン直径以内に存在する電子を考えると、これはサイクロトロン運動の途中で端との衝突を繰り返し、結果的に端に沿って動いて行くことになる。この描像は不純物散乱の影響が小さく、バリスティックに近い系で成立するものであるが、磁場を強くしていくとサイクロトロン運動の径は磁場に反比例して小さくなるため、移動度の小さい(不純物散乱の多い)2DEGでも十分に強い磁場中では必ずこの描像が成立する。この時、試料端にそって動く電子は電流を運ぶことができるため、これをエッジチャネルと呼んでいる。強磁場中では試料端以外では電子はサイクロトロン周回運動をしており、周回運動をしている電子は平均すると一点に留まっているため、電流はエッジチャネルのみで運ばれるようになる。エッジチャネルは試料端に張りついた幅の狭い細線とみなすことができ、強磁場中ではこれが後方散乱のない理想的な細線として働く。この時、エッジチャネルが運ぶ電流はバリスティックな一次元細線が運ぶ電流と同じになり、e2/n•v•V (Vはエッジチャネルに電流を流し込むオーミック電極の電位、vはモード数)になる(「バリスティック伝導」、「量子細線」の項参照)。強磁場中でスピンが分離しているため、量子ポイントコンタクトと異なり、Vの前のチャネルコンダクタンスに対応する係数は2e2v/nでなくe2v/nである。このエッジチャネル描像を用いると(整数)、量子ホール効果はエッジチャネル間の電流の連続条件から容易に導くことができvはランダウ充填率に対応する。この考え方はButtiker - Lan­dauerにより初めて導入されて以来、量子ホール効果領域での伝導特性を説明するのに広く用いられてきた(「量子ホール効果」の項参照)。なお、ほとんどの構造で試料端は存在し、エッジチャネルは重要な働きをするが、コルビノ電極(同心円状のオーミック電極)構造のようにエッジチャネルが存在しない構造もある。

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