半導体用語集
クーロンドラッグ
英語表記:Coulomb drag
近接した二次元電子ガス(2DEG)や一次元電子ガス(1DEG)の層間、あるいは細線間で生じるキャリア間のクーロン相互作用によるドラッグ効果をいう。具体的には一つの層(あるいは細線)に電流を流した時に電流に伴うキャリアの運動量が、クーロン力を通してもう一方の層(細線)のキャリアに伝達し、微小な電圧が観測される効果である。単一の2DEGの移動度から電子-電子散乱の影響を議論することは難しいが、ドラッグ実験では層間ではあるが、電子-電子散乱による信号をより直接的に取り出すことができる。ドラッグの大きさはg₁、g₂|W₁₂|²(g₁、g₂;1,2層の状態密度、W₁₂;層間相互作用のマトリクスエレメント)に比例する。実際にはプラズモンなどの影響で複雑に変化するが、ボルツマン輸送方程式を用いて層の厚さを無視した近似では|W₁₂|²はT²に比例して増大し、ドラッグ効果は温度が高いほど促進される。また、強磁場中ではg₁、g₂がランダウ準位に状態密度が集中した周期的な関数になるため、シュブニコフドハース振動(「シュブニコフドハース振動」の項参照)と同様な振動がドラッグ電圧にも観測され、そのピーク値も大きくなる。層間の距離が離れてくると、クーロンドラッグよりもフォノンを介在にした運動量伝達(フォノンドラッグ)が重要になる。一般的な伝導特性にくらべてドラッグ効果の信号は小さく、層(細線)間のリークや電流を流したことによる電位の変動などの副次的効果の影響を受けやすく、信頼できる測定はかなり難しい。なお、電子ガスと正孔ガスのクーロンドラッグもエキシトンの形成などから興味が持たれているが、電子-電子(あるいは正孔-正孔)にくらべ近接した構造を作成するのが難しく、きちんとした測定はまだ行われていない。
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