半導体用語集

シリンダ型装置

英語表記:

エピタキシャル成長装置の一種。バレル型ともいう。図1に示すように、ウェハは石英製のベルジャ内部に設置された多角錘台状のサセプタ(ウェハ保持台)にほぼ垂直保持され、ベルジを外部に設置されたハロゲンランプにより輻射加熱される。サセプタは10 rpm 程度で回転しており、ウェハの均熱、ガス流均一化を図っている。原料ガスとしては厚膜成長には、主にSiCL、SiHCl 、薄膜成長にはSiHzCIが用いられる。SiH4では反応管内壁への反応生成物の堆積、いわゆるウォールデポが起こるため、本装置では使用されない。大型化により、150 mmфで21枚、200mmфで10枚までウェハが載置可能となっているが、主に150mmфまでの生産に使用されてる。200mmф以上の大口径ウェハに対しては、枚葉エピタキシャル装 置が主流になりつつある。本装置の特徴は、スリップが発生しずらく、金属汚染・LPDなどの表面欠陥が少ないことにあり、高品質結晶を必要とする先端 MOSデバイス用エピタキシャルウェハやバイポーラデバ イス用エピの製造に適している。一 方、表面加熱のためウェハ裏面温度がサセプタ温度より高くなり、ウェハ裏面がエッチングされやすい。そのためにウェハ平坦度の劣化、高濃度基板での裏面からのオートドーピングによるウェハ周辺抵抗だれが生じやすいが、これらに対しては、基板裏面をCVDSiO2 膜で被覆することで防止できる。 また、先端バイポーラデバイスではサブコレクタの抵抗低減のため、n⁺埋 め込み層のドーパントとしてSiへの 固溶限の高いAsが用いられている。 Asは常圧エピタキシャル成長ではオートドーピングが大きいため、本装置に減圧機能を設け、深さ方向、横方向 のドーパント分布を制御した減圧エピ タキシャル成長も実施されている。一 方、本装置ではその構造上、ベルジャに供給し、基板上に目的とする抵抗、厚さの単結品を成長させる技術である。原料ガスとして、単結品Si成長用原料ガスとドーピング用ガスがある。ドーピング用ガスはn型ではホスフィン(PH3)、アルシン (AsH3)が用いれ、p型ではジボラン (B2H6)のみである。ここでは主に成長用ガスについて述べる。産業レベルで使用されている原料ガスは主としてSiCI4やSiHCI3であるが、一部SiH2C12や低温成長可能なモノシラン (SiH4)も使用されている。このうち、四塩化ケイ素(SiCl4)、トリクロルシラン(SiHCI3)は常温では液体なのでバブラという気化器を必要とする。反応は以下に示すようにSiCl4は水素還元反応、SiH4は熱分解反応により基板上へ Si が析出する。
  SiCl4+2H2 → Si ↓+ 4HCI、
  SiH4 → Si ↓+2H2
ジクロルシラン(SiH2Cl2) や SiHCI3 はこれらの反応が同時に起こっている。エピタキシャル成長速度の温度依存性は、温度が高いほど成長速度が速くなる表面反応律速領域,温度依存性の小さい拡散律速領域、高温のため気相反応が生ずる均一気相核生成 領域に分かれる。ガス種によりこれらの領域は異なるため、最適成長温度は異なる。成長温度はCIを多く含むほど高くなり、通常用いられる成長温度はSiCl4では1,150~1,250℃、SiH4では950~1,050℃、SiH2Cla, SiH2Cl2ではその中間になる。エピタキシャルウェハには、適用デバイスにより種々のエピタキシャル膜特性が求められ、かつ求められる特性の重要性もデバイスにより異なるので、それに適した装置、ソースガスが 使用される。ディスクリート用エピタキシャルでは、厚膜、高抵抗を必要とする高耐圧パワーMOSデバイスには、高速成長可能で良好な膜質がえられるSiHCI3、SiCl4が主に用いられる。また、バリキャップなど、高濃度As基板上に、膜厚・抵抗均一性が高 く、かつ深さ方向での不純物分布が精密に制御されたエピタキシャル膜を必要とするデバイスでは、裏面エッチングによるオートドーピング回避のため、CIを含まないSiH4が使用されている。MOS用エピタキシャルではスリップ、パーティクルフリーな高品質 エピタキシャル膜を必要とされ、これ らに対してはSiHCl3が主に用いられる。バイポーラ用エピでは高濃度埋め込み層上にエピタキシャル成長するため、パターンシフト, パター ンだれ、オートドーピングなどに対する配慮が必要となる。パターンシフト、 パターンだれは高温成長、かつC1 原子数が少ないほど小さい。オートドーピングは埋め込みドーパント原子によるが、一般にn型では高温成長ほど小さく、 p型ではその逆である。そのため、n 型/p型埋め込み層を形成した基板にエピタキシャル成長する場合には最適なソースガスの選択が必要となるが、 通常はエピタキシャル膜厚によりソー スガスを使い分け、厚膜ではSiCl4 、薄膜では SiH2C12が使用されている。


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