半導体用語集

スマートカット

英語表記:smart cut

 水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用したSi基板の劈開のことであり、フランスのSOITEC社から提案され、貼り合わせSOI基板の作製に応用されている。
 スマートカットのメカニズムは詳細に調べられている。Si(100)基板を用いた場合、水素イオン注入により水素のピーク濃度付近に微小ボイドが形成される。微小ボイドは大きさ~20nm、厚さが~1nmの(100)面に平行なものが大多数であるが、一部に(111)面に平行なものが存在する。500℃の熱処理では微小ボイドは動かないが、サイズの増加、つまり成長がTEMにより観察され、スマートカットは(100)面上の微小ボイドの成長と残留ストレスにより起こると考えられている。昇温脱離分析(TDS)では昇温時400~500℃で貼り合わせた基板からの水素の発生が確認され、400~500℃でスマートカットが起こっていることがわかる。スマートカットが起こる深さはイオン注入された水素のピーク濃度付近である。
 微小ボイドのサイズ、密度は500℃熱処理の極初期(~5分)には両者とも急激な増加が確認され、以後はサイズが増加するが密度は減少する。このように微小ボイドはオストワルト成長機構に従い成長するが、水素イオン注入時だけでは微小ボイドの核形成は終了せず、熱処理の極初期まで核形成が起こる。
 水素イオン注入直後の微小ボイド分布は水素分布と一致することがSIMSにより確認され、赤外吸収スペクトル分光からはSi-H結合が確認されている。Heをイオン注入した場合は平板状の微小ボイドは確認されなかったことから、イオン注入された水素はSi-H結合をして(100)面、あるいは(111)面上に存在すると考えられている。
 スマートカットが起こる時間の活性化エネルギーは500℃以下では2.3eV、600℃以上では0.4eVであった。Si中の水素拡散の活性化エネルギーが0.48eV、Si-Hの結合エネルギーが1.8eVのため、微小ボイドの成長に対し600℃以上では水素拡散が反応を律速しているが、500℃以下では水素拡散の前にSi-H結合の分解が必要と考えられている。
 水素イオン注入のドーズ量が1×10¹⁷ cm⁻² では、イオン注入されたウェハの表面形状に変化はみられず他のウェハとの貼り合わせが可能であるが、2×10¹⁷ cm⁻² 以上では、イオン注入だけで剥離が起こる。このため、スマートカットには3×10¹⁶~1×10¹⁷ cm⁻² のドーズ量が用いられる。また、このドーズ量でもイオン注入直後に処理すると部分的な剥離が起こってしまう。ウェハ全面にわたる剥離は基板用ウェハと貼り合わせた場合に確認され、基板用ウェハがスマートカットでの補強材の役割を果たしている。

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