半導体用語集

貼り合わせ

英語表記:wafer bonding

SOI基板の作成方法の一つである。 酸化膜を介してSi基板を他のSi基板と貼り合わせることによりSOI基板を製造する方法として広く用いられている。なお、貼り合わせ法には導電型の異なるSi基板同士を直接貼り合わせてpn接合を形成する方法もあり一 部の高耐圧デバイスに用いられている。酸化膜を介したSi基板の貼り合わ せは、一方の基板を熱酸化した後、もう一方のSi基板と室温、大気中で特 に圧力を加えず重ね合わせることから 始められる。重ね合わせられた基板は 貼り合わせ界面で化学結合を起こさせ るため1,100°C程度の温度で熱処理さ れる。熱処理された基板はデバイスを 形成する側の基板をポリッシュやエッチング、あるいは水素イオン注入を利 用したへき開(スマートカット)により薄膜化する。この薄膜化の方法によりPACE、ELTRAN、UNIBOND など種々の方法が提案されている。貼り合わせ法によるSOI基板の特徴は、薄膜Si層の結晶性が高く貫通 転位がないことと埋め込み酸化膜の完全性が高いことである。ただし、Si 層薄膜化時のポリッシングダメージ起因の欠陥やエピタキシャル成長を用いるELTRANではSFの残留が報告されている。埋め込み酸化膜は熱酸化膜のためSIMOXでみられるようなピ ンホールや Si アイランドはない。ま た、薄膜 Si層,埋め込み酸化膜界面 も熱酸化界面のため平坦で界面準位密度は少ない。ただし、薄膜 Si層の膜厚均一性、制御性はSIMOXより劣り、5~10%が実力とみられる。 一酸化膜を介するSi基板同士の貼り合わせ機構は以下のように考えられている。貼り合わせでは一方の基板のみに酸化膜を形成する場合と両方の基板に酸化膜を形成する場合があるが、一 方のみに酸化膜を形成する場合でも、もう一方のSi基板表面には自然酸化 膜を形成して親水性にして貼り合わせるため同一の機構で説明される。貼り合わせられる基板の酸化膜表面にはOH 基が存在し、特に圧力を加えなくても OH 基同士が水素結合で結合される。実際の基板表面には微小な凹凸があるが、表面吸着水分による水クラ スタにより密着されるとのモデルも考 えられている。この後の熱処理でOH 基の熱分解が起こり、~700℃の低温ではシラノール基による結合に変わり、さらに高温ではシロキサン結合に変わる。室温での貼り合わせ段階では、基板表面の微小な凹凸による微小ボイドが存在するが、~1,000℃以上の熱処理で酸化膜の粘性流動により微 小ボイドは消滅する。しかし、マイクロラフネスが大きい場合は、熱処理でもボイドは埋まりきらずに残存する。 X線トポグラフィを用いた評価では ボイドフリーには貼り合わせ前の表面のマイクロラフネスをRaで0.45 nm 以下にする必要があるといわれている。また、ダストがあると、未貼り合わせ領域としてボイドが発生する。ボイドでは貼り合わせ後の熱処理で内部のガスが膨張しクラックが発生する場 合もあり、極力発生を防ぐ必要がある。貼り合わせ法の特徴は表面が鏡面であれば種々の物質同士で貼り合わせができることにある。このため、Si基 板同士の貼り合わせだけでなく、 Si 基板と石英基板、 サファイヤ基板や SiC基板とSi基版の貼り合わせが報 告されている。Si基板とサファイヤ 基板の貼り合わせも酸化膜を介した Si基板と同様のモデルで考えられており、水素結合の熱分解で発生した過剰な水がサファイヤ基板に吸収されな いためボイドが発生する。一方、石英 (SiO2) 基板では発生した水が石英に吸収されポイドは発生しないため、Si 基板とサファイヤ基板の貼り合わせではSi基板表面に酸化膜(SiO膜)を 形成し界面に発生した水を酸化膜に吸収する必要がある。このサファイヤ基板と石英基板の差の原因は原子的空間 に余裕のあるアモルファスと単結品の 違いと考えられている。また,異物質 同士の貼り合わせでは熱膨張係数の差 によるワレやクラックが発生しやすくなるため,同種物質同士を貼り合わせる場合以上に昇降温時の温度均一性を確保する必要がある。


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