半導体用語集

バリ取り

英語表記:deburr

 モールド工程でリード表面に滲み出た樹脂バリを外装処理工程の前に除去する工程。プラスチックパッケージに必要な工程である。バリ取りは,それ自体付加価値を与える工程ではないため,必ずしも必要な工程というわけではなく,近年のモールド工程でのバリレベル改善により徐々に省略されていく傾向にある。
 バリ取りの方法としては,大別して機械的方法と,化学的方法の2種類がある。
 機械的方法は,メディア(研磨剤)をぶつけるホーニングと,水の噴流を吹きつけるウォータジェットに分けられる。さらにホーニングの種類としては,メディアをエアーだけでノズルから吹きつけるドライホーニングと,メディアを水に溶いて高圧空気(400~500kPa)と一緒にノズルで吹きつけるリキッドホーニングに分類される。ドライホーニングでは,メディアとしてクルミの殻を砕いたものが使われてきた。ドライホーニングは,バリ除去性に優れているが,製品の洗浄が必要なことと,リード間にメディアがつまってしまうこと,またランニングコストが高いなどの理由から現在はほとんど使用されていない。リキッドホーニングではメディアとして,ガラスビーズやプラスチックビーズが用いられている。バリ除去性はドライホーニングに次いでよく,メディアの再利用ができるためランニングコストも安い。バリの除去性はメディアの径と関係があり,大きい径のメディアを用いればバリ除去性が高くなるが,リード間につまりやすくなる。バリレベルとリードピッチを考えてメディアの材質と径を選ぶことが必要である。また以上述べたホーニングはパッケージ樹脂表面を荒らすこともあるため,必要によっては,樹脂表面を守るためのマスクを入れることも考えなければならない。
 ウォータジェットは水をノズル先端から高圧で吹きつける。ノズルはダイヤモンド製で0.1~0.2mmの径のものがよく用いられる。必要な水圧は 30~100MPaという超高水圧のため,専用のポンプが必要となる。ホーニングの加工エリアが数10mmあるのに対し,ウォータジェットは加工径が3mm程度しかないため,パッケージに対してノズル先端を移動させる必要がある。ノズルを高速に振ってリードフレーム全域をカバーする全面打ちタイプと,樹脂周囲のバリが出ているところだけを処理する狙い打ちタイプがある。狙い打ちタイプの方が品質がよく,加工速度も速いが,リードフレームやパッケージの種類により,位置決め治具やノズルブロックを用意したり,ノズル軌跡のプログラムを入れる必要がある。
 化学的なバリ取り方法は,アルカリ液(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸ナトリウム)に浸漬する方法,および電解をかける方法があげられる。浸漬はアルカリ液による樹脂の膨潤により,電解は金属表面で発生する水素ガスの剥離作用を利用し,樹脂バリを金属表面から浮かそうとする方法である。しかし,化学的なバリ取り方法だけでは樹脂バリを浮かすだけで完全な除去には至らないので,前記の機械的方法との併用が効果的である。またアルカリ液への長時間の浸漬や強い電解は,樹脂とリードの密着性を低下し,ひどい場合はパッケージ内部に液が浸透,残留し,インナリードを汚染するため十分な注意が必要である。
 バリ取り工程の評価項目は,バリ除去性確認(顕微鏡検査)と,樹脂とリードの密着性チェック(超音波探傷法)を行う。またアルカリ浸漬や,アルカリ電解を用いた場合は,インナリード汚染分析を行う必要がある。なお厚さ数µmのバリの残留は外観からは分からないため,バリ除去性については,フラッシュめっきを行ってから確認するのがよい。外観検査における不良項目としては,樹脂カケ,樹脂クラック,バリ残り,リード欠損,リード曲がり,リード細り,リードフレーム変形,メディア残り(ホーニングの場合)などがあげられる。


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