半導体用語集

ヒ化アルミニウム

英語表記:Aluminum arsenide

 アルミニウム(Al)とヒ素(As)からなる化合物で,アルミニウムヒ素とも呼ばれている。閃亜鉛鉱型の立方晶系に属する灰色の結晶で金属光沢がある。分子量は101.90,格子定数は0.5661nmである。融点は約1,700℃であるといわれているが確定していない。また,室温での熱膨張係数は5.2×10⁻⁶/℃で,比誘電率は10.1である。0Kおよび室温での禁制帯幅はそれぞれ2.2eV,2.15eVと広いが,間接遷移型の半導体である。GaAsとAlAsの三元混晶であるAlxGa₁₋xAsは,Alの組成xによって電気的・光学的特性が大きく変化するが格子定数はほとんど変わらないので,GaAsの基板上に任意のAl組成xのAlxGa₁-xAs薄膜を積層しても良好な膜をえることが可能である。そのため,AlxGa₁₋xAs/GaAsへテロ構造は,レーザディスク(LD)やコンパクトディスク(CD)の読み取り用の半導体レーザや,衛星放送用低雑音アンプや携帯電話用高出力アンプ用のHEMT⁑や電界効果トランジスタ(FET)⁂,へテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)†などに広く応用されている。

⋆ AlGaAs半導体レーザ;GaAs基板上に積層したAlxGa₁₋xAsを活性層とする半導体レーザである。活性層のAl組成xを変化することによって,0.75~0.87mmの波長で発振する。活性層を挟むクラッド層にはAlの組成yが大きい(禁制帯幅が大きく,屈折率の小さい)AlyGa₁₋yAsを用いる。
⁑ HEMT;半導体へテロ接合部に生じる高移動度の電子層(または正孔層)をチャネルとするトランジスタで,High Electron Mobility Transistorの略である。AlGaAs/GaAsのAlGaAs層にドーピングを施すと電子は高純度のGaAs層に移行し,接合界面に高移動度の二次元電子ガスが形成される。HEMTはこの二次元電子ガスの濃度をゲート電圧で制御し,ソース・ドレイン間の電流を制御する。
⁂ 電界効果型トランジスタ(FET);Field Effect Transistorの略で,ゲート電極とチャネル層間の電界効果によって,ソース・ドレイン電極間のキャリアの流れを制御するトランジスタである。ゲート電界効果を生み出す構造の違いによって,ショットキ接合型とpn接合型に分けられる。
† へテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT);エミッタ,ベース,コレクタのそれぞれの領域に不純物をドーピングしたnpn(またはpnp)の従来のバイポーラトランジスタの変形として,pn接合部にヘテロ接合を用いたもので,Heterojunction Bipolar Transistorの略である。エミッタ・べース間の禁制帯幅の差を利用して高速動作がえられる。


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