半導体用語集

フラクタル構造

英語表記:fractal structure

 フラクタルは,B.B.Manderbrotが,自己相似性を有する図形の集合に対してあたえた名前である。今,あるd次元空間の図形を大きさLの領域で切り取ったものを考え,それをd次元の球で覆うのに必要な個数をN(L)とする時,式(1)により,フラクタル次元Dを定義する。「自己相似性」とは,図形の一部を拡大・縮小すると統計的に元の図形と同じようなパターンが再現される性質を意味しており,スケール不変性といい換えることが可能である。d次元空間を格子に分割して,それぞれの格子に粒子が,あるか,ないかによって図形が与えられるとすると,距離r離れた二つの格子間の密度相関関数 式(2)を用いると,スケール不変性は,等方的な図形の場合には,式(3)のように数式的表現ができる。ここで,εは,任意のスケール因子,ρ(r)は,点rが,粒子によって占められている場合を1,空である場合を0とする関数である。この関係を満たす唯一の関数は,式(4)である。この2体の密度相関関数を半径Lの球内で積分すると粒子数,式(5)が求まる。フラクタルの定義から指数αは,フラクタルの次元,DとD=d-αなる関係を持つことがわかる。フラクタル図形の場合,Dは,次元dより小さく,0より大きい非整数となる。現実の複雑な図形を小さな格子に分割して,2体の密度相関関数,c(r)を求め(ボックスカウンティング法),それがrに対して冪依存性を示せば,その図形は,フラクタルであり,その依存性からフラクタル次元Dを求めることができる。
 ところで,自然現象は,一般にきわめて複雑で,現象を分類・整理することさえ困難に思われるが,フラクタル図形と密接な関係を持っている場合がある。たとえば,過飽和度が高い結晶成長においてよく観測される樹枝状結晶(DLA:Diffusion Limited Aggregation,と呼ばれる)などは,一見して自己相似的でフラクタル図形であることが示唆される。物質内にこのような微視的フラクタル構造が存在すれば,X線の回折パターンに直接反映されるので,小角散乱測定などを行うことにより評価できる。また,物質内部にフラクタル構造が存在すれば,物性にはそれを反映したものが現われる。たとえば,相転移点近傍では各種の物理量が羃級数的な発散を示すが,その振る舞いの背後にフラクタル的な構造が関係していることを示唆している。相転移,カオス,結晶成長,パーコレーションなどランダムでゆらぎのある複雑な物理現象では,フラクタル構造が関係する場合が多い。また,複雑な微視的組織構造を有する材料の構造を定量的に評価するためにフラクタル次元の考え方を取り入れる工学的な応用も試みられている。


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