半導体用語集

プラズマダウンフロー処理

英語表記:plasma downflow treatment

プラズマの下流にウェハを設置して、その表面の自然酸化膜を除去するプラズマダウンフロー洗浄法がいくつか開発されている。この方法の利点は被洗浄ウェハがプラズマ領域から十分離れているため、イオンや電子などの高エネルギーの粒子に直接曝されることなく、ダメージフリーの処理が可能であるところにある。アンモニア (NH3)と三フッ化窒素(NF3)を混合した後に、これにマイクロ波を印加してプラズマ化し、その下流にシリコン酸化膜の形成されているウェハを設置して処理を行うと、シリコン酸化膜をエッチングすることができる。NH3とNF3の混合比を適当にすると、シリコン酸化膜とシリコンの工ッチング選択比が非常に大きくなる(シリコンがほとんど工ッチングされない)。工ッチングの機構はNH3とNF3混合気体のプラズマによりNH4Fが生成され、これがシリコン酸化膜のエッチャントとして働き、シリコン酸化膜をエッチングするといわれている。この時エッチングに伴う副生成物としてへキサフルオロケイ酸アンモニウム ((NH4)2SiF6)がシリコン表面に堆積するが、これは100℃程度の真空中加熱により容易に除去できる。しかしながらフッ素を含むガスを放電しているため、放電部のマイクロ波透過材に石英を用いた場合、それがエッチングされ、発じん源となることや自然酸化膜が除去された後のシリコン表面にフッ素が残留してしまうなどの問題点がある。NH3の代わりに水素(H2)を用いた場合にも、そのプラズマダウンフロー領域においてシリコン酸化膜がエッチングできることが示されているが、この場合のエッチング機構もNH3とNF3混合気体の場合と同じであると考えられる。
H2をプラズマ化した場合、生成された水素原子はダウンフロー領域において直ちに再結合してしまうために、大量にダウンフロー領域に導くことは難しい。しかしH2にわずかに水蒸気 (H2O)を混合した気体をプラズマ化した場合、そのダウンフロー領域にH2のみの場合の100倍以上の水素原子を導くことができることが明らかにされた。 この現象を利用して、このようなプラズマのダウンフロー領域にNF3を添加することで、NH3+NF3 やH2+NF3プラズマダウンフローの場合と同様な機構で、 シリコン酸化膜のェッチングが可能であることがわかった。この場合、フッ素を含むNF3 はプラズマ化していないので、フッ素原子は生成されず、放電管からのパーティクルの発生や被洗浄ウェハ表面へのフッ素の吸着などの間題はない。この方法をシリコン基板を底、側壁をBPSG (Boron Phosphorus Silicate Glass、ホウ素やリンの添加されているCVDで成長したシリコン酸化膜) 膜とするコンタクト孔底のプラグ電極形成前の洗浄(自然酸化膜除去)に適用した場合、コンタクト抵抗は従来法の緩衝フッ酸溶液を用いた場合と同様で、かつ孔の径の広がりははとんどない。これは従来方法の緩衝フッ酸を用いた場合、 BPSG膜と熱酸化膜のエッチングレートはBPSG膜の場合の方が数倍大きいが、このドライ洗浄の場合、BPSG膜と熱酸化膜のエッチングレートはほぼ等しいことに起因していると考えられる。これらの方法は容易に他の成膜装置とクラスタ化できるドライ洗浄方法として期侍できる。


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