半導体用語集

ペニングイオン化電子分光

英語表記:Penning ionization spectroscopy

 ペニング電子分光法はPenningイオン化過程で起こる電荷移行を用いて局所原子,分子の電子状態を調べる手法である。固体表面の局所分布する原子間結合状態の分析が可能である。当初,Penning電子分光法は気体の電離過程の一つとして研究され,光電子スペクトルと比較されながら分子の振動状態の分析に用いられていた。
 Penningイオン化と呼ばれる過程について簡単に述べる。Penningイオン化とは励起状態にある原子または分子A*が別の原子または分子Bと衝突して,これをイオン化する過程である。
  A*+B→A+B⁺+e
 ここでA*の励起エネルギーE(A*)がBのイオン化ポテンシャルIP(B)より大きいという条件がある。すなわちE(A*)<IP(B)である。系A*+Bのエネルギー準位は,生成系A+B⁺+eの連続電子エネルギー状態にあるといえる。したがって,Penningイオン化はイオン化ポテンシャルより高い励起状態にある二原子分子ABの自動電離状態を示している。またターゲットが原子以外に分子も考えると,二次電子のスペクトル構造は振動電子状態も反映する。
 二次電子のスペクトルを分析することにより,固体表面に存在する分子の結合状態,電荷状態を調べることが可能である。
 装置構成としては,励起原子ビーム源,二次電子をエネルギー分析するアナライザ,検出器と試料を装着するゴニオメータからなる。装置には10⁻⁸Torr以上の真空度を必要とする真空排気系が用いられる。

 (1)励起原子ビーム源
 準安定励起状態の原子ビームを作るには,ソース内にガスを満たし,放電させるが,放電方法としては電子衝撃による方法が使われる。生成された準安定励起状態の原子を数十eVの運動エネルギーでビームとして用いる。
 Penning電子分光法に用いられる準安定励起状態原子は現在He(2³S)が使われる。Heビームを電子衝撃し,不要なHe(2¹S)状態を取り去った原子ビームが励起源として用いられる。
 (2)電子エネルギー分析器
 放出し,検出される二次電子は数eVであるので,相応のエネルギー分析器が必要とされるが,小型の同心半球型エネルギー分析器,円筒鏡型エネルギー分析器が用いられ,検出器としては,荷電粒子検出器として一般的に用いられるチャネルトロンが用いられ,コンピュータと連結したパルス計測系により信号処理がなされる。
 (3)ゴニオメータ
 試料を装着するゴニオメータとしては,x,yの二軸と回転軸の三軸は最低限必要とされる。ターゲット原子に対するペニング電子は,その原子と一次準安定励起原子の相互作用によって異方性を示すからである。
 ペニング電子分光の適用としては,(1)固体表面分子の電子状態測定,(2)固体表面分子の振動構造測定,(3)ペニング電子の角度分布による固体表面分子状態の測定などがある。
 ペニング電子分光は気体原子,分子に対しては理論的研究もなされ,興味ある分析手法である。しかし,固体原子,分子に対してはデータも不十分であり,装置が市販化されていない状況である。えられる二次電子強度分布も弱く,必要な分析結果をえるには時間がかかるという課題を無視できない状況もある。これらの問題点からペニング電子分光を用いた単独分析装置の市販化は難しく.複合装置の一付属装置として現在は使われている。


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