半導体用語集
ミシビリティギャップ
英語表記:Misibility Gap
普通、溶液または固溶体(混晶)が均一な混合状態としてえられない組成域をミシビリティギャップという。非混和組成域ということもある。In₁-xGaxP、GaAs₁-xSbx、 In₁-xGaxAs₁-yPyなどの混晶半導体を一定の温度以下で成長しようとすると、中間組成域にミシビリティギャップが現われる。
ミシビリティギャップを生じる非混和性の原因は、成分の混合による内部エネルギーの増加が、均一な混合状態の安定化を妨げることによる。
熱力学的に定義されるミシビリティギャップは厳密な概念であり、下記に述べるように混晶の自由エネルギーの組成存性に基づいている。混晶半導体の混合自由エネルギー⊿Fは、正則溶体似の下で、
⊿F=Ω(1-x)x+RT{(1ー)
1n(1-x)+x1nx}(1)
で与えられる。Rは気体定数、Tは絶対温度、Ωは相互作用パラメータである。式(1)の第1項は混合内部エネルギー、第2項は一T✕(混合エントロピー)を表わす。第2項の寄与が大きい時には、⊿F は組成xに関し下に凸の曲線であるが、Ω>0の場合、
Tc=Ω/2R
(2)で与えられる臨界温度Tc以下では、第1項の寄与により中間組成域に上に凸の部分が現われる。この時変曲点xs₁、xs₂(スピノーダルという)で囲まれる組成城は混合不安定域、共通接線の接点xb₁、xb₂(バイノーダルという)で囲まれる組成域で不安定域外の部分
は準安定域、その他の組成域は安定となる。スピノーダル、バイノーダルはそれぞれ、
RT=2Ω(1ーx)x(3)
RT 1n{(1ーx)/x}=Ω(1-2x)(4)
の共役な2根で与えられる。混合不安定域内の組成はわずかな相分離ゆらぎに対しても不安定で、バイノーダルの2組成に相分離(スピノーダル分解)することで安定化する。準安定域内の組成はわずかな相分離ゆらぎに対しては安定であるが、大局的にはバイノーダルの2組成に相分離した状態が安定である。不安定域と準安定域を合わせた組成域が熱力学的に定義されるミシビリティギャップである。ミシビリティギャップは、臨界温度以下で生じ、温度の低下とともに拡大する。
混合によって内部エネルギーが増加するのは、混晶中の原子の不規則配列によって内部応力が発生するためである。この効果は混晶半導体一般に存在する。ただしその程度は、PとSb、またはNとAsのように、原子半径差の大きい原子種の混合において著しく、この時相互作用パラメータΩは、正の大きな値を持つ。たとえば、In₁-xGaxPではΩ=3,500cal/mol、GaAs₁-xSbxではΩ=4,500cal/molで、式(2)によりそれぞれ、Tc=608°Cおよび860°Cとなる。GaAs₁-xNx、ではΩ=43,000cal/molと見積られており、800°Cでの平衡固溶度(バイノーダル)は1.9✕10⁻⁹と極端に小さい。
ミシビリティギャップ内の組成は熱平衛状態では安定に存在できないために、平衡状態図において、そのような組成と平衡する液相または気相は存在しない。一定温度で、固相と平術する液相または気相組成を連続的に変化させていくと、平衡固相組成は一つのバイノーダルの組成から他の一つのバイノーダルの組成にシャンプすることになる。
実際の結晶成長では、ミシビリティギャップの組成域内であっても、均一組成の混晶がえられるかどうかは、基板結晶の存在や成長環境の非平衡度に影響される。エピタキシャル成長において、基板結晶と格子整合する組成の近傍では、格子の歪みが安定化されるために見かけ上ミシビリティギャップが消滅することがある。また有機金属気相成長(MOVPE)法や分子線結晶成長(MBE)法など非平衡度の大きい成長方法では、供給された原料比に応じた成分の混合状態が結晶成長時に凍結されることにより、ミシビリティギャップ内の組成がえられる場合がある。たとえば、分子線結晶成長法で、x=15%に及ぶGaAs₁-xNx混晶半導体がえられている。ただし、微視的な組成の不均一や局所的な相分離が同時に観察される場合も少なくない。
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