半導体用語集

モノシラン反応機構

英語表記:reaction mechanism of monosilane

モノシランの気相熱分解反応機構に関する研究は30年以上の研究の蓄積がある。また、表面反応機構に関しても理論化学計算などにより、詳細な検討がなされつつあり、数多くある CVD薄膜合成の中でも、最もよく研究されている反応系である。モノシランを原料としたポリシリコン薄膜のCVD合成では、薄膜を形成する経路が二つあると考えられる。一つはモノシランが表面に直接吸着し反応する経路であり、この経路が主体の場合にはステップカバレッジはほぼ100%を達成できる。一方、モノシランが気相中で単分子熱分解反応すると SiH2 (シリレン)を生成する。SiH2 は親ガスのモノシランと容易に反応し、活性なSi2H6 (ジシラン)を形成する。しかし、この活性なSi2H6は通常のSi2H6とくらべて非常に不安定であり、すぐにHSiSiH3 (シリルシリレン)とH2に分解するといわれている。このシリルシリレンもシリレンと同様の反応性を有し、親ガスであるモノシランと反応して容易に高次シラン類 (SinH2n+m)を形成する。高次シラン類からはモノシランと同様にシリレン化合物が生成する。このため、モノシランの単分子熱分解反応によるシリレン生成をきっかけとして、多種多様の活性な分子種(以後、ラジカル類と総称する)が生成する。ラジカル類の生成量はモノシラン濃度のおよそ2乗に比例するため、モノシラン濃度を増大するとラジカル類の生成はより顕著になる。また、ラジカル類も表面に到達すると反応してシリコン薄膜を形成する。ラジカル類は表面での反応性も非常に高いため、ラジカル類による薄膜形成が主体となる条件ではステップカバレッジが非常に悪くなる。
モノシランの気相熱分解反応は単分子熱分解反応であるため、その反応速度には全圧依存性がある。すなわち、モノシランが分解するためには、そのエネルギーを他の分子との衝突によってえなければならないが、通常のLPCVD程度の圧力領域では分子衝突が十分ではなく、分解反応速度が全圧の低下に伴って低下する。このため、シリレン生成を第一段階とするラジカル類の生成が顕著には進行しない。したがって、主にモノシランが表面にそのまま吸着して反応する経路が主体となり、ステップカバレッジの良好な成膜が可能となる。しかし、モノシランガスの表面での反応性が非常に低いため、成膜速度は遅く100Å/min以下になることが多い。スループットを確保するためにはバッチ式の反応器が必要となる。一方、枚葉式反応器による実用的な生産を行うためには、成膜速度の向上が必須である。しかし、先に述べた反応機構からも明らかなように成膜速度を増大させるためにシラン分圧を増大させると、全圧の増大、気相重合反応の顕著化、などの理由によりラジカル類の生成が無視できなくなり、ステップカバレッジが劣化する。成膜速度の上昇と良好なステップカバレッジの維持を両立するための工夫が必要となっている。


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