半導体用語集

ラジカル源

英語表記:radical source

プラズマ反応過程においては、ラジカルと荷電粒子が固体表面において複雑な反応を引き起こす。特に、荷電粒子は、固体表面に形成されたシースポテンシャルによってあるエネルギーを持って固体表面に入射する。 このような荷電粒子のエネルギーによって固体表面の化学的結合が切断されたり、物理的な衝突により多くの欠陥が発生するなどの損傷が固体表面に発生する。また、イオンと電子の入射数の差により、固体表面には不均一なチャージが蓄積され、表面に大きな電界が生じてデバイスなどに損傷が生しる。このような荷電粒子に起因する損傷をなくした無損傷プロセスとしてラジカルを利用したプロセスが行われている。 ラジカルを用いたプロセスでは、通常の安定な分子を用いたプロセスにくらべて低温で比較的高速の反応をえることができる。 したがって、デバイスプロセスを低温かつ無損傷にて実現することが可能である。
このようなラジルを発生させる装置をラジカル源と呼ぶ。ラジカル源については、ダウンストリーム法、荷電交換法、グリッド法、熱および光分解法など多くの方式がこれまでに試みられている。
(1)ダウンストリーム法
プラズマ生成部と分離した領域でプロセスを行う方法をダウンストリーム法と呼ぶ。この方法では、プラズマ生成部で生じたラジカルを下流(ダウンストリーム)に輸送することにより、短寿命の荷電粒子やラジカルを消滅させ、長寿命のラジカルのみをえることが可能となる。したがって、ラジカルのみを用いて無損傷の反応プロセスを実現することができる。特に、プラズマ領域で発生したフッ素原子などの長寿命エッチング系ラジカルを反応室に輸送して、エッチング反応を実現する方式をケミカルドライエッチング (CDE: Chemical Dry Etching)と呼ぶ。CDEは、シリコンやレジストを低温、無損傷かつ大面積にわたってエッチングすることが可能である。
また、ダウンストリーム法では、プラズマ領域の下流にウェハを置き、長寿命の堆積性のラジカルを輸送することにより、比較的低温にて種々の機能性薄膜を無損傷で堆積させることも可能である。
(2)荷電交換法
イオンが中性分子と衝突すると、イオンの電荷を中性分子に与えて高速の中性粒子になる反応(A++A → A+A+またはA++B→A+B+)により高速のラジカルを生成させる方法を荷電交換法と呼ぶ。この方法によりC12放電で生じた塩素イオンを加速した後、荷電交換により原子ビームあるいは分子ビームとして取り出し、GaAsをエッチングした例がある。また、
CHF3/Arガスを用いたECRプラズマにおいてイオンを荷電交換にて中和させて高速のラジカルビームを作成し、SiO2/Siの徴細パターンの選択エッチングを実現した例も報告されている。
(3)グリッド法
高密度プラズマ源を用いて高密度の荷電粒子とラジカルを発生させるプラズマ源とプロセス室の間に設けたグリッドに電圧を印加することによって、荷電粒子を電気的に除去しプロセス室へラジカルのみを輸送する。高密度プラズマを用いることにより、高密度のラジカルの生成が可能である。原子状のラジカル(O、H、N)は、半導体プロセスに有用であり、これらのラジカル源が活発に開発されている。
特に、ECRプラズマ源を用いたラジカル源は、低圧での放電が可能であり、低圧で動作が必要なMBE装置などへ利用されている。また、永久磁石の利用により、非常にコンパクトな ECRラジカル源が開発されている。
(4)熱および光分解法
分子を熱や光にて分解することによりラジカルを発生し、発生したラジカルによってプロセスを実現するものである。種々の分子とレーザとの組み合わせによる分解、あるいは分子の高温分解により並進エネルギーの高いラジカルの発生が可能である。ガス分子の加熱により振動熱励起したC12分子を生成し、ホットなC12分子による多結晶Siの異方性のエッチングが実現されている。
(5)その他
プラズマを金属板に照射することにより、金属板上で荷電粒子を中和させてラジカルを発生させる方法や石英板を冷却し、表面上にガスを吸着させておき、ガス吸着面とは反対側からレーサを石英板に照射することによりラジカルを発生させる方法などが報告されている。


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