半導体用語集
両性不純物
英語表記:amphoteric impurity
化合物半導体は2種類以上の構成元素からなるので,不純物原子が置換すべき格子位置は2種類以上ある。不純物原子の働きは,置換する元素との原子価の差で決まる。特に,構成元素の中間の価数を持つ元素,たとえば,Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体ではⅣ族元素のシリコンなどは,Ⅲ族位置に入った場合とⅤ族位置に入った場合とでは,ドーパントとしての働きがまったく逆になる。すなわち,シリコン原子がⅢ族位置に入ればドナーとして働き,一方,Ⅴ族原子を置換すればアクセプタとして働く。このような不純物原子を両性不純物と呼ぶ。両性不純物原子がいずれの格子位置を占めるかは,化学量論的組成からのずれに関係した固有点欠陥の種類と密度に大きく影響される。そのため,結晶成長条件やイオン注入およびその後のアニール時の条件などによって,一方の格子位置にのみ選択的に入らない場合には,キャリア密度がドーパントの原子濃度よりも小さくなってしまい,いわゆるキャリア補償が起こる。ドーパントの活性化率が低くなる,ともいう。
両性不純物の性質を積極的に利用した,興味あるpn接合形成技術がある。一つは,ガリウムヒ素の液相エピタキシャル成長において,両性不純物であるシリコンが高温ではアクセプタとなるが,低温まで下げてくると,ある温度以下でドナーに変換することを利用して不純物の種類を変えないでpn接合を作る方法である。また,成長基板の面指数によって,GaAs系半導体中のシリコン不純物の置換格子位置が異なることを利用して,成長面内でpn接合を形成する試みもある。
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